日本市場では即配サービス「クイック(Q)コマース」の成長は難しいのか─。昨年から、有力企業の事業停止や、外資系企業の撤退が相次いでいる。その要因はコロナ禍の収束による巣ごもり需要の減退だけではない。22年1月に国内から撤退したDelivery Hero Japan(デリバリーヒーロージャパン)で新規事業開発本部本部長を務めていた佐藤丈彦氏は、日本ならではの商慣習や法規制などがQコマースの成長を妨げる要因になっていると明らかにした。そんな中、OniGO(オニゴー、本社東京都、梅下直也社長)は既存の小売店舗との提携戦略に注力し、着実にサービスを拡大している。日本におけるQコマース市場の成長余地について探る。
「Qコマース」とは、最短10~15分で食品や日用品などを配達するデリバリーサービス。配送専用店舗(ダークストア)から近隣の消費者に商品を届けるモデルが一般的だ。ネットスーパーやECサイトよりも商品をすぐ受け取ることができる。
コロナ禍の巣ごもり需要拡大の追い風を受け、ヤフーが「ヤフーマート」を開始したり、外資系企業が日本に参入したりすることで、日本における「Qコマース」市場は急拡大しそうに見えていた。
だが、22年1月にグローバルでQコマースを展開するDelivery Hero(デリバリーヒーロー)が、日本から撤退すると発表した。さらに、同10月には国内で最も古くからQコマースを展開していたクイックゲットも事業停止を発表した。
今年3月には、韓国のEC大手であるCoupang(クーパン)も、日本におけるQコマースのサービス停止を発表し、撤退した。
■日本ならではの障壁
なぜ多くの企業が国内の「Qコマース」市場から撤退するのか。日本でQコマース「pandamart」を他社に先駆けて全国展開していたDelivery Hero Japanで新規事業開発本部本部長を務めた佐藤丈彦氏は、日本ならではの細かい法律やルール、出店条件などに課題があったという。
「『Qコマース』で購入単価や利益を確保するためには、商材の幅を広げていく必要がある。例えばタバコは利用頻度の高い商材だが、取り扱いには細かいルールがある。認可を得るには近隣にタバコ販売店がないことが条件になるが、たとえもう営業をしていないとしても、廃業届が出ていない場合など、希望する出店場所で思うように取り扱えないケースもあった」(佐藤氏)と話す。
医薬品や酒類なども限られた出店場所や地域の行政との折衝などを考えると、取り扱うのは難しいケースもあったという。
■OniGOは急成長
一方、Qコマース市場で成長を続けている事業者もいる。OniGOは今年3月、店舗数が60を超えたと発表した。店舗数は前年比4.8倍と急拡大し、拠点数はQコマースで最大規模となった。急成長の背景には、小売企業との提携戦略がある。
(続きは、「日本ネット経済新聞」5月25日号で)
【クイックコマース】 有力企業の撤退相次ぐ/日本市場開拓には”提携戦略”が有効か(2023年5月25日号)
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