目立った展開を抑えていたメーカー系通販企業各社が、徐々に通販事業強化に向けた動きをみせている。大手製薬メーカー・第一三共の子会社である第一三共ヘルスケア(本社東京都、西井良樹社長)はこのほど、化粧品「ライスフォース」の通販を手掛けるアイム(本社香川県、沼田憲孝社長)を11月に買収すると発表した。同じく製薬メーカーの武田薬品工業も9月28日、本格的なスキンケア化粧品シリーズを通販で初投入。全国紙に全面広告を出稿するなど活発なプロモーションを行っている。
通販会社買収、化粧品参入など動き活発
第一三共ヘルスケアは12年7月、独自化粧品ブランド「ダーマエナジー」を立ち上げ、通販に参入した。ただ同社は、顧客の肌トラブルを理由に、14年12月に同ブランドの販売を中止。以降、目立った通販事業の展開をしてこなかった。そんな中で10月2日、化粧品のECサイト「ライスフォース」の運営を手掛けるアイム(本社香川県、沼田憲孝社長)を買収すると発表した。第一三共ヘルスケアは、アイムの持つ通販やECのマーケティングノウハウを共有することにより、自社の通販事業基盤の強化を図りたい考えだ。
11月4日に全株式をエムシーピースリー投資事業有限責任組合から譲り受ける予定。取得価額は「非公表」(第一三共・コーポレートコミュニケーション部)としている。アイムは、コメを酵母や乳酸菌で発酵・熟成させた成分を主成分とする化粧品ブランド「ライスフォース」を展開している。今回、第一三共が公表した資料によると、同社の15年2月期の売上高は58億1100万円。売上高に占めるネット通販売り上げは大きく、本紙推定で約40億円。
同社は、SNSの活用がECの拡大に寄与しているという。10年からフェイスブックを開始し、10月13日現在で日本語版が8万5000を超える「いいね!」を集めている。
今回の買収の影響についてアイムでは「ネームバリューがある第一三共グループに入ることは当社にとってメリット。ユーザーからの信頼度向上につながるのではないかと期待している」(管理部)とコメントしている。
一方、第一三共もアイムを「物流基盤や通販コールセンターなど顧客サポート体制が確立している」(コーポレートコミュニケーション部)と高く評価。「アイムの株式取得により、通信販売事業基盤を速やかに構築することが可能となる。スキンケア領域のさらなる強化を図る」(同)と今後の方向性について話している。
通販事業の目標や今後の具体的な展開については「現在はお話しできる段階にない」(同)としている。
アイムでは「具体的なことはまだ決まっていないが、ライスフォースの顧客向けに第一三共ヘルスケアの通販商品の案内をするといったコラボレーションは考えられるのではないか」(管理部)と話している。
12年5月に自社ECサイト「タケダ通販ショップ」を立ち上げ、薬用入浴剤で通販に参入した武田薬品工業は初の通販化粧品シリーズ「グラフィエ」を9月28日に投入した。14年10月に発売したユーグレナ(和名ミドリムシ)含有健康食品と併せ、同シリーズを通販事業強化の柱としたい考えだ。「グラフィエ」の発売にあたっては、全国紙5紙に全面広告を掲載。専門のコールセンター部署も立ち上げるなど、並々ならぬ期待感を伺わせている。
同社ではグラフィエのプロモーションにあたって、リスティングを中心としたネット広告展開も積極的に実施している。「タケダ通販ショップ」への流入増を狙っており、「拡販につなげたい」(同)考えだ。
(続きは日本ネット経済新聞 10月15日号で)
メーカー系通販が活性化/目立つ製薬系の通販強化/第一三共ヘルスケアはアイムを買収
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