【千趣会 星野裕幸 社長】〈業績低迷の中、トップに就任〉/通販立て直し、V字回復へ

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星野裕幸社長

星野裕幸社長

通販業界大手の千趣会が苦戦を強いられている。1月29日に発表した15年12月期の業績予想の修正によると、売上高は前回予想を11億7800万円下回る1343億2100万円に、当期純利益は32億4000万円の損失予想を、53億700万円の損失に下方修正した。業績低迷の要因は通販事業による売り上げ不振だ。この厳しい状況の中、1月1日付でトップに就任した星野裕幸社長に、千趣会が抱える課題や業績立て直しへの見通しなどを聞いた。

商品開発、ECを強化

 ─社長就任の打診は、いつごろあったんですか。
 「明確には言えないが昨秋くらいだ」
 ─そのときの心境は。
 「(業績が)危機的状況なので、それを背負っていかなければいけないという身の引き締まる思いがした」
 ─田邉(道夫)前社長はなぜ辞められたんですか。
 「一つは業績に対する責任を取られた。それと昨年当社が60周年を迎えたのを機に、一つの区切りとして世代交代を決断された」
 ─新社長として社員にはどのようなメッセージを送りましたか。
 「当社も60年たって非常に古臭い会社になっていると感じていた。それをもう一度元気がいい、若さあふれる、活力のある、チャレンジできるような会社にしたいというメッセージを伝えた。千趣会の社員はポテンシャルがあると思うが、組織の問題などで力を出して切れていない。そこを変えるにはトップが変わるのが一番いい機会になる」
 ─社長就任と同日付で行った組織改正のポイントは。
 「重要なのは商品開発とECだ。商品開発は『商品開発本部』を新設して一つにまとめた。さらに『販売企画本部』の中に『EC企画運営部』と『EC販売推進部』を新設して人材を集約した。従来はファッション、ライフスタイル、育児の事業本部別に商品開発からカタログ制作、ネットの運営を手掛けていた。意思決定がそれぞれ早くできそうに見えても人材が足りず、本部によっては戦略が進まない課題があった。再度機能別の組織に変更して、それぞれ精通した人材を配置した」


基幹ブランドに手応え

 ─千趣会が現状抱えている課題は何だと捉えていますか。
 「通販事業だ。商品開発で十分差別化できていないこともそうだが、外部環境による影響もある。一つは紙のメディアによるコストパフォーマンスが年々下がっていることだ。紙に代わる販売力はECだと思うが、そこが伸ばせていない。さらに少子高齢化によって、われわれが得意としている妊産婦の顧客が減少し、マーケット自体がシュリンクしていく。つまり新しいお客さまを開拓していかなければならない。まず50代、次に60代を狙っているが、そのスピードが遅い。海外を見据えた打ち手も進んでいない。中国市場は最近、少しずつ売り上げが伸びてきたが、今後はスピードを上げて伸ばしていきたい。こうした課題に対して武器となるのがオリジナル商品で、商品開発力が最も重要になる」
 ─中国での販売チャネルとは。
 「(現地法人が)タオバオに出店して通販を行っている。昨年11月11日(独身の日)は現地における年商の半分近い売上高を1日で計上した。現地での年商は公表していないが10億円未満だ。今後は越境ECも検討しなければならない」
 ─オリジナル商品では今春、通販事業ベルンメゾンの基幹ブランド「ベルメゾンデイズ」の販売が本格的に始まりました。立ち上がりの手応えは。
 「若干計画には未達だが手応えは感じている。今期からしっかり売上高を上げていくと同時に、中身をブラッシュアップしていかなければならない。『ベルメゾンデイズ』はアジアに進出するブランドに育成すると公言しているし、『ベルメゾンデイズ』の売り上げによって売上総利益が改善する予算を組んでいる」
 ─1月から新年度がスタートしました。今期重点的に取り組む事項は何ですか。
 「商品開発しかりオムニチャネルしかり、すべて中期経営計画に掲げていることだが、スピードを上げて取り組むということだ。Jフロントリテイリングとの業務提携や、子会社のディアーズ・ブレインによるワタベウェディングとの業務提携など、昨年仕込んだことを刈り取って成果を出していく」

続きは「日本流通産業新聞」2月4日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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