ワタミの宅食事業の業績が回復基調にある。18年3月期における宅食事業の売上高は、前期比1.0%増の380億円と4期ぶりの増収となった。業務委託契約の販売員「まごころスタッフ」の中途採用強化と待遇の改善に着手。販売員を安定的に確保することで2期連続の増収を目指す。4月1日に宅食事業の責任者に就任した曽我部恭弘氏に増収に転じた経緯と19年3月期の事業計画について聞いた。
─18年3月期は4期ぶりに増収に転じた。
宅食事業としては増収増益決算だった。増収要因は、お客さまの食数が増加に転じたことだ。食数については近年、2013年をピークに3期連続で減少が続いていたが16年の下期中に下げ止まりし、17年度(18年3月期)の期中には増加に転じた。
全国的に見れば、西日本地区で新規顧客を獲得できた。特に、商品を配送するスタッフ「まごころスタッフ」を増やすことができた。当社のビジネスモデルは、配送スタッフの数が食数に比例するという傾向にある。まごころスタッフの数は全体では減少しているが、西日本側だけは増加に転じたことが成果につながった。
─西日本でスタッフを確保できた理由は。
従来、スタッフの募集広告を積極的に出稿しておらず、スタッフの補充という意味合いで行っていた。
18年3月期は、減少傾向に歯止めをかける目的で、まずは応募数を増やす方針に切り替え、ウェブも紙媒体も積極的に予算を投じた。応募者に対しては、なるべく早い段階で面接を集中的に行ってきた。よりウェブへの比率を高める方針にしたことも成果につながった。ウェブから応募してくる人が増えたことで、全体的な平均年齢の構成比は若くなった。具体的には、30〜40代前半の子育て層の女性が増えた印象だ。ウェブでは、「子どもを見ながら仕事ができる」「短時間で働くことができる」ことを前面に押し出した。
─18年4—9月期(中間期)の状況はどうか。
事業戦略として、税込490円という低価格の弁当「まごころ手鞠」を軸に新規顧客を増やしていくことに主眼を置いた。休眠顧客を低価格商品で掘り起こしたいという狙いがあった。従来の商品価格帯では継続的な利用が難しいと感じて休止した人に対してアプローチをした。
関東圏内で6月と8月にテレビCMも放送した。その結果、低価格帯の商品の販売数が伸びた。売り上げは前期に対して若干割り込んでいるが、新規顧客は着実に増えている。「まごころ手鞠」が想定以上に注文があり、平均顧客単価を押し下げる結果となった。
上期(4—9月)は、テレビCMの反響のあった消費者宅に「まごころスタッフ」が個別に訪問して契約するという流れとした。スタッフには、ここで獲得した顧客の継続を優先的に営業活動をする方針を伝えてきた。お客さまのニーズに合うような商品の提案をすることに力を注いだ。
─4月に組織改編も行った。
これまで4階層(支社長▽支部長▽統括支部長▽所長)だったが、3階層(支社長「7人」▽エリアマネージャー▽所長)に改めることで本社の指示が販売員にいきわたりやすくした。現場の営業所長に対して、私自身が指示を直接するようにも改めた。当然だが、所長への理解度が高まれば高まるほど、全体の意思疎通が図れることができ、販売員の動きが変わってくると考えている。
─「まごころスタッフ」に対する研修制度についてはどうか。
約2年前から清水邦晃社長をはじめとする経営陣と支社長が選抜した10人前後の優秀な販売員が直接コミュニケーションを取る「まごころ集会」を始めている。現場の販売員から課題や成功事例を直に聞くことで、事業計画の構築に生かすのが目的だ。この際に、優秀な販売員の成功事例を毎月冊子にして共有している。
そのほか、月2回のペースで、10〜15分の動画を制作して販売員としての心得や営業施策などを「教育部」が作成して配信している。
─「まごころスタッフ」に対する待遇改善も事業計画に盛り込んだ。
業務委託のため、配達件数がゼロ件だと報酬が発生しないというケースが出てくる。今期から、一定数の顧客を当社が事前に用意するか一定の報酬(数万円)を事前に確保するという選択制度を設けた。これは販売員が選べるのではなく、営業所長が販売員の適正に応じて選んでいる。
─19年3月期の下期(10月以降)の事業計画については。
まごころスタッフの営業力が向上するような取り組みをしていきたい。上期は広告宣伝費を投下して、スタッフは”待ち”に近い状態だった。上期で減収傾向になっていることから、対面力を磨き、巻き返しを図っていきたい。
【企業データ】
設立 1978年創業、2008年にワタミグループ傘下に
売上高 18年3月期は前期比1・0%増の380億円
取扱商品 オリジナル調味料付き食材セット、高齢者向け弁当、夕食おかず
【食品宅配 インタビュー】 ワタミ 曽我部恭弘執行役員 宅配事業本部長/「まごころスタッフ」強化で2期連続増収目指す
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