日本流通産業新聞社はこのほど、電話応対業務を受託するコールセンター企業の売上高を集計した「第24回コールセンター売上高調査(2016年度)」をまとめた。ランキング38社の合計売上高は9841億9400万円となり、前年実績と比較可能な25社で算出した実質伸び率は5.6%だった。実質伸び率は前年調査に比べると1.0ポイント減。今回の調査では大手だけでなく、中小の増収が目立ち、全体売り上げを底上げしている。
コールセンター売上高ランキングは全国の主要企業38社を集計した。38社中、約7割にあたる26社が増収だった。減収は6社だった。
上位4社を見ると、首位のトランスコスモスがさらに売り上げを伸ばした。2位のNTTマーケティングアクトは昨年度に続き減収。3位のベルシステム24ホールディングスは親会社の伊藤忠商事とのシナジーや大規模センターの増設により売り上げを伸ばし、増収に転じた。
4位の、りらいあコミュニケーションズは、国内事業の業績が堅調に推移したことに加え、買収したフィリピンのコールセンター会社の売り上げが上乗せされた形となり、大幅な増収を達成した。
中堅企業も堅調に業績を伸ばしている。
24位のベルウェール渋谷は、大手クライアントの売り上げ拡大に伴う形で受託量が増加。通販サポートのほか、メーカー系クライアントも増加した。
29位のテレネットは、KPI(重要業績評価指数)や定期便への引き上げ率で実績を積み上げ、既存クライアントのブース数が拡大した。大手通信系企業の新規クライアントを獲得している。
38社中、2桁増収を達成したのは8社だった。
■23年連続で伸長
コールセンターランキング上位30社の合計売上高は9766億4000万円で、本紙が同調査を始めた93年以降、23年連続で拡大を続けている=右下グラフ参照。
リーマンショックの影響を受けた08年以降は市場成長率が鈍化していたが、12年度以降は再び成長軌道が安定している。EC市場の拡大にともない、EC系クライアントの獲得を戦略的に進める企業も増えているようだ。
市場が拡大する一方で、人材不足問題に頭を悩ませる企業が多い。
各社に取材すると、ランキング掲載企業の多くが人材確保に向けた取り組みを強めている。最低賃金の上昇にともない業界全体で時給単価が上がっているが、それだけでは定着率を維持できないため、働きやすさの向上やコールセンター業界の認知度と魅力を高めていく必要があるとする声が多かった。
「働きやすさ」の向上に取り組む企業も増えている。一般的にコールセンターのオペレーターは女性の比率が高いため、託児所併設型のセンターや時短勤務の対象期間を延長する例もある。出産後や育児後に復帰しやすい環境整備も進んでいる。
注目される人工知能(AI)への関心はどの企業も高い。トランスコスモスは9月にAIの研究所を開設した。ベルシステム24ホールディングスや、りらいあコミュニケーションズも活用を進めている。
中小ではコストの壁が大きく、AIの導入を未定とする企業が多かった。普及が進んで価格が下がるのを待ってからでも追いつけるという声もあった。
AI活用やRPA(ロボットによる業務自動化)の取り組みを強化することで、コストの削減や人材不足をカバーしていく狙いもあるようだ。
社員の定着率向上のカギとなるのがAI、RPA、働き方の見直しーーー。これらのテーマを抱えながら、コールセンター業界は変革期を迎えている。
(続きは、「日本流通産業新聞」10月26日号で)
【第24回 コールセンター売上高調査】実質伸び率5.5%/38社合計は9841億円に
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