【通販会社による通販支援】 物流受託で売上拡大/同梱・広告は横ばい、縮小

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茨城・つくばみらいに建設中のスクロールの新物流センター

茨城・つくばみらいに建設中のスクロールの新物流センター

 通販企業の法人営業部門が、物流業務の受託によって売上高を拡大している。スクロールの100%子会社で、ソリューション事業を手掛けるスクロール360は今期(20年3月期)、物流の新規受託を16件獲得した。ベルーナの受託事業本部も今期(同)、物流業務の受託が売上高をけん引している。自社のカタログや発送商品に、他社のカタログやチラシを同梱・同送する広告部門の売上高は、減少あるいは横ばいの推移となっている。本業である通販事業の減収に伴い、カタログの発行部数削減や商品発送件数の縮小が影響しているためだ。同梱・同送事業は踊り場を迎えており、法人向けに新規事業を模索する動きも出始めている。

■物流受託とともにCRMノウハウも

 スクロールの19年4―9月期(中間期)、ソリューション事業による売上高は前年同期比14.5%増の70億8800万円だった。ソリューションセグメントの中心となるスクロール360が、物流業務の新規獲得を進めている。このほか、後払い決済のキャッチボールによる新規クライアント開拓や、アフィリエイトを手掛ける、もしもの事業拡大などが増収をけん引している。
 スクロールは5月、茨城・つくばみらいに新たな物流センターを竣工する。敷地面積1万4976平方メートル、延床面積約3万平方メートルの規模で、地上5階建の鉄骨造り。土地を含めた投資額は約60億円に上る。
 スクロール360の営業現況について、「新規クラインと獲得の営業は積極的に行っており、新規は物流だけで16社ほど増えている。5月に竣工する、つくばみらいも予約という形で何社か入っている」(スクロール360・高山隆司常務)と説明する。
 スクロール360の営業強化は、新たにグループ会社化した、もしもの影響も大きい。物流の新規クライアントとなるのは、年商数億円から数十億円規模のリピート通販系のEコマース(EC)事業者が中心。
 スクロール360は業務提案の際に、CRMに関するノウハウもアドバイスすることで受託につなげている。一例を挙げると、リピート系EC事業者が既存顧客の離脱で悩んでいたとする。
 スクロール360は当該EC事業者の顧客を対象にグループインタビューを実施。いつ、どのような理由で離脱したのか、離脱した期間に分けてグループインタビューを行い、原因を追究していく。
 その結果に基づいて、どのタイミングで、どのようなプロモーションを行えばいいのか、もしもが助言。SNSの利用や同梱物のタイミングなど、CRMにつながる全体設計を提案している。
 「ネットだけのリピート通販も出てきているが、リピート系ECのところは意外と手法を知らない。弊社は単純に物流業務を提供するだけでなく、CRMを実施できるのが強みとなっている」(同)と言う。


■EC物流受託が売上げをけん引

 ベルーナの19年4―9月期(中間期)、ソリューション事業による売上高は前年同期比38.2%増の37億6400万円、セグメント利益は同20.7%増の12億2400万円だった。今期の売り上げをけん引しているのは物流に関する業務受託案件だ。
 「物流は完全にECとなっている。基本的にアパレルECは一切やっていない。SKUが多いので倉庫の坪効率を勘案しているためだ」(受託事業本部部長代理兼BBS事業部・武田文彦部長代理)と説明する。物流業務は従来、埼玉・上尾の領家丸山流通システムセンターで対応してきたが、すでに満床。現状は、近隣にある遊休施設を活用しながら、受託案件に応じて対応している。
 新規クライアントの獲得は、「既存のお客さまからの紹介案件が増えている。BCP的な観点から物流拠点を分けてリスクヘッジしたいという要望も寄せられている」(同)と言う。今後はクライアントのニーズに応じて対応エリアも検討していく計画だ。


■本業の売上減少で広告関連苦戦

 通販企業の法人営業部門にとって、物流やコールセンターといった業務受託意外のメニューは苦戦している。いわゆる同梱・同送などの広告関連だ。千趣会は前期、サンプリングの売上高が、前期比42.4%減の6億4500万円だった。これは「千趣会のポリシーにそぐわない」という理由から、コールセンターのアウトバウンド業務を中止したためだ。
 通販企業の法人部門にとって、自社の媒体や商品に印刷物やサンプルを同梱する事業は、自らの判断というよりもカタログ関連の媒体計画に左右される側面がある。自社の通販売り上げが減少傾向にあり、カタログやDMなど紙の媒体が縮小される中、広告関連で新規クライアントを開拓するのは厳しくなっているのが実情だ。


■「FAXDM」、売上高50%増

 そうした環境下、広告関連で健闘しているのがディノス・セシールの法人向けプロモーションサービスだ。セシール事業の顧客に対して、クライアントのメッセージをFAXで送信する「FAXDM」は今期、売上高が50%増で推移している。リピート率が高いとともに、CPOが安価となっているためだ。
 「FAXDM」はA4判タテで、上部に商品、下部に申し込み蘭を設けた定型タイプとなっている。セシールの顧客のうち、FAX送信で同意を得ている「セシールFAX倶楽部」の会員数は数十万人規模。性別や年齢、エリアなどでセグメントでき、最小ロットは1万件から実施できる。
 「『FAXDM』の利点は印刷が必要ないこと。クライアントは原稿のデータだけを納品いただければ、制作費はかからない」(営業本部保険・メディア営業部メディア営業ユニット・秋山強ユニットマネージャー)とメリットを強調する。
 クライアントは食品(新茶・おせち・梅干し・せんべいなど)を取り扱っている事業者が中心となっている。イニシャルコストがかからないほか、少ない部数でテストをして結果が出ているので「リピート利用されるクライアントが多い」(同)と説明する。
 ディノス・セシールではこのほか、ディノス事業の顧客をターゲットにした「カタログ同封」「商品同梱」にも根強い需要がある。クライアントにとって2回目以降の継続率が評価されていることから、「CPOだけでなくLTVで見られている」(同)ようだ。
 セシール顧客へのアウトバウンド以外、業務受託メニューを用意していないディノス・セシールだが、差別化のある広告メニューの展開で、今期の法人営業部門による売上高は計画通りに推移している。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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