9月9日未明に関東を直撃した台風15号による停電の影響で、太陽光発電の「蓄電池」のニーズが増加している。日本エコシステムでは、蓄電池の見積依頼の問い合わせが増え、ドアツードアの訪問販売を行うTCGは、「千葉支店に寄せられる、蓄電池に関する相談の件数が増えた」としている。日天によると「蓄電池の設置を真剣に検討しておけばよかった」という声が顧客からは寄せられているという。一方強風によって太陽光パネルが飛んでいってしまったケースや、太陽光パネルの落下によって火災が発生したというケースも報告されている。台風15号は、太陽光発電や蓄電池を含めた、災害時の電力確保について、消費者が考え方を変えるきっかけになりそうだ。被災地で今何が起こっていて、太陽光発電の市場は今後どうなりそうなのか、現地で活動する太陽光発電7社の証言を基に検証する。
■停電は約93万軒
東京電力ホールディングスが9月9日に発表した、台風の影響により千葉県内で発生した停電件数は約93万4900軒。経済産業省が試算した台風の影響による電柱倒壊数は約2000本で、千葉・君津市にある高さ50メートル前後の東京電力の送電用鉄塔が2基倒壊。総務省消防庁の統計によると、千葉県内の住宅損壊または一部損壊の件数は1万1413軒になると発表するなど被害は甚大だった。同時に断水被害も多く、千葉県内だけで13万9744戸もあった。
台風15号が過ぎ去った9月9日、千葉県に拠点を置く太陽光発電訪販事業者A社の会議室では、緊急会議が始まった。台風の影響に関する情報を集約するのが目的だった。「『家屋が老朽化していたため、太陽光パネルが屋根ごと吹き飛んだ』という問い合わせが1件あった他、『太陽光パネルが飛来物により破損した』『パネルの一部が飛んだ』といった問い合わせが6件あった」(担当者)ことなどが報告された「太陽光パネルが外れ、隣の住宅にぶつかった」(担当者)というケースもあったという。「太陽光パネルがなぜ飛んでしまったのか、事故の原因については、弁護士を立てながら検証を進めることを決めた」(担当者)ということだ。
東京都にある太陽光発電の訪販事業者B社も9月18日時点で「強風による飛来物が太陽光パネルに直撃し、修理対応に追われている」(担当者)と話していた。公的な補償などを活用しながら顧客への対応を行っていく方針だ。
東京都に本社を置く太陽光発電の訪販事業者C社では「台風の後、非常用電源の使い方に関しての問い合わせが増えた」と話す。せっかく蓄電池を持っていても、非常用電源として使うためには、切り替えの簡単な操作が必要。操作方法が分からず、問い合わせる消費者が多いのだという。ただ「せっかく問い合わせを寄せてくれても、被災地は電波状況が悪く、途中で通話が切れてしまうことも少なくない。こちらが折り返し電話してもつながらないことがあった」(担当者)と話す。「電波がつながるところまでわざわざ移動して、電話を再びかけてきた顧客もいた」(担当者)と言う。
東京都に本社を構えるD社でも、太陽光パネルや蓄電池を設置した既存顧客から「停電での非常用電源に関する問い合わせ」が増えたと話す。
太陽光発電の普及や広報活動を行う(一社)太陽光発電協会(所在地東京都、菅原公一代表理事)では「現時点までに当協会が行った調査の結果として、太陽光発電メーカーに対する、非常用電源の使い方についての問い合わせが増えていることは把握している」(広報渉外部長・山伏正孝氏)と話している。
(続きは、「日本流通産業新聞」9月26日号で)
〈太陽光発電訪販事業者〉 停電で蓄電池ニーズ増も/災害の電力確保課題に
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