改正消費者安全法が施行/消費者生活相談員を国家資格に/地方の相談員の地位向上を目的に

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 消費生活相談員の立場を明確にする資格制度を盛り込んだ改正消費者安全法が4月1日に施行した。国が指定する2団体の資格試験に合格することで「消費生活相談員」の資格が得られる。地方自治体で働く相談員の地位向上と業務レベルの向上を目的とし、増加傾向にある高齢者によるトラブルの解消につなげる。企業側にすれば、あっせんする相談員のレベルが向上することで解決が迅速になる可能性もある。

 改正前の消費者安全法における「消費生活相談員」は、消費生活センターの設置要件には盛り込まれておらず、法律上の立場が明確ではなかった。地方には非常勤の相談員も多く、いわゆる〝雇止め〟を受けるケースもあったという。また、内閣府令で列挙する消費者団体が実施している資格試験を受けていない相談員もいた。そのため、相談員によってスキルに差が生じたり、雇用が不安定であることを理由に退職を余儀なくされることもあったという。
 相談の現場では企業側から「どんな立場なのか」といった厳しい指摘もあり「足元を見られることもあった」(消費者教育・地方協力課)と話す。一方で企業の消費者窓口の担当者からは「相談員によって解釈が異なる」といったクレームも出てきており、相談スキルの平準化が求められていた。
 新資格を取得するにはどのような方法があるのか。改正法では、4月6日現在で登録試験機関として申請のあった、国民生活センターの「消費生活専門相談員」と日本産業協会の「消費生活アドバイザー」の2つの資格を内閣総理大臣登録試験機関として指定。新たに相談員として活動するためには、この2つの試験のいずれかに合格する必要がある。
 従来から相談員として活動する人はどうなるのか。先述の2つの資格に加え、日本消費者協会の「消費生活アドバイザー」を加えたいずれかの資格を有し、1年以上の相談員として働く人や、実務経験が1年以下の人は指定する講習会を受講することを条件に「みなし合格」として認める。
 さらに、資格を有していない人でも、自治体の首長が認定した場合も合格とみなすという。3資格以外の相談員資格を取得しても直ちに「消費生活相談員」として認定されないものの、自治体の首長が認めれば「みなし合格」となる。
 企業や業界団体に勤務する相談員については「そもそも新制度の対象にしていない」(同)と話し、あくまで自治体の相談員の任用のための資格という位置付けだ。
 消費者庁では、都道府県に対し「地方消費者行政推進交付金」を交付し相談員のレベルアップを図る。16年度は30億円を予算として確保している。
 19年4月1日には、都道府県の消費生活相談員の中から相談員の指導や助言などを行う「指定消費生活相談員」の設置を努力義務として盛り込む方針だ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ