【昆虫食通販】販売企業は軒並み大幅減収に/「ペット」「海外」に活路か(2024年8月1日号)

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TAKEOの人気商品

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 23年の年明けから起こった、昆虫食の炎上騒動。昆虫食を批判するSNS投稿が急増し、テレビやウェブメディアでも、過剰な昆虫食批判が相次いだ。23年は、通販などで昆虫食を販売する企業が軒並み大幅減収した。17年から昆虫食事業を始め、ECなどで販売しているMNH(エムエヌエイチ、本社東京都)は、「19年の売り上げを1とすると、22年には約7倍になった。それが23年で1に戻ってしまった」と言う。昆虫食のECなどを展開するTAKEO(タケオ、本社東京都)は23年の売上高が、前年比で30%以上の減収となったようだ。販売やコラボレーションに消極的になる企業が激増。原料や製品の卸先が撤退するケースも相次いだという。騒動以前に昆虫食を販売していた企業の中には、事業の方向転換を余儀なくされたケースもある。事業が大幅縮小してしまったケースも少なからずある。倒産に至ったケースも出てきているようだ。

■各社売上は激減

 MNHは17年にECで昆虫食を発売。20年には、初年度の約6倍の売り上げを記録したという。「20年までも売り上げは緩やかに伸びていった。20年には、無印良品がコオロギせんべいを発売。昆虫食の注目度が高まり、一気に売り上げが伸びた」(小澤尚弘社長)と話す。
 その後、昆虫食の売り上げは、22年まで前年比微増で推移していたという。ところが、23年の炎上騒動で、一気に売上高が19年当時に戻ってしまったのだという。
 「以前は、昆虫食企業としてイベントに出展したりしていた。昆虫食がメディアで前向きに取り上げられる機会も少なくなかった。23年の騒動を機に、そうしたことが軒並みなくなった。メディアが『昆虫食=悪』という印象を植え付けているようだった」(同)と話す。
 当時のメディアの報道ぶりに不満を隠さないのは、TAKEOも同様だ。同社では16年の設立以降、売上高が前年比20~50%増のペースで成長を続けてきたという。23年は一転、設立以来初の減収減益となった。前年比の減収率は30%以上だったとしている。
 「騒動以前は、SDGsの理念にもかなった新しい食材ということで、多くのメディアが前向きな報道をしていた。だが、騒動以降は多くのメディアが昆虫食を叩くようになった。昆虫食を叩けば、PVが増える、広告収入も増えるといった状況だったのだろう」(齋藤健生社長)と話す。
 「例えば、昆虫食にこんな食べ方がある、楽しみ方があると発信しても、メディアは見向きもしない。聞かれるのは、『がんにならないのか』『多額の補助金をもらっているのか』といった内容ばかりだった。それらの質問に対し真実を伝えても、それは報道されないといった状況だった」(同)と話す。
 齋藤社長は騒動以降、業界やメディアとの関係性について考えるようになったという。「今回の騒動を通じて、昆虫食を扱う事業者や、新規参入企業の考え方が明確になった。信念をもって昆虫食を広めたいと考えている企業もあれば、単なるビジネスとしてしか捉えていない企業もある。騒動以降も残っている事業者は、信念を持って事業を展開してきたのだと考えている。そういった事業者と付き合っていきたいと思えるようになった」(同)としている。
 FUTURENAUT(フューチャーノート、本社群馬県)の櫻井蓮CEOも、「取材の対応には消極的になっている」と話す。「騒動以降、話した内容のネガティブな部分だけが取り上げられるケースが増えた。ポジティブな話をしても、書かれることはほとんどなかった」(同)と言う。
 同社では騒動以前、ECでの直販を行うかたわら、商業施設などで昆虫食イベントを開催したりしていた。騒動後は、イベントの数が激減してしまったという。


■縮小・破産・転換も

 昆虫食の炎上騒動において、渦中の企業だったといえるのがグリラス(本社徳島県)だ。同社では昆虫食を、「未来の食材」「社会課題の解決につながる」といった形で展開、資金調達や事業拡大を積極的に行っていた。炎上直前の従業員数は約30人だったが、現在の従業員数は5人前後にまで減っているという情報がある。廃校舎を活用したコオロギ飼育施設「美馬ファーム」も閉業しているようだ。
 ある昆虫食販売企業の社長は、

(続きは、「日本流通産業新聞」8月1日号で)

MNH小澤社長

MNH小澤社長

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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