東京都/M3,9カ月間一部業務停止/学生勧誘で

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東京都は3月3日、大学生会員が契約意図を隠して勧誘を行い、連鎖販売取引のリスクを理解していない学生に契約を締結させていたとして、健康食品でネットワークビジネス(NB)を展開するM3(本社東京都、西山啓道社長)に対し、特定商取引法に基づき9カ月間の一部業務停止を命じた。M3では大学生を含む若年層会員が13年9月から急増、コンプライアンス強化に乗り出していたが、消費生活センターに寄せられる相談件数の増加を食い止めるに至らなかった。処分を受けて西山社長は、「問題の再発防止に注力すると共に、成熟した大人度の高い会員で構成される健全な組織作りに全力で取り組む」と話している。

4年間に都に寄せられた相談件数は95件
 都によると、「同社の勧誘者は連鎖販売取引について知識、経験がなく、固定収入のない学生に対し、知識、経験および財産の状況に照らして不適当な契約の勧誘を行っていた」(生活文化局消費生活部特別機動調査担当・高綱哲之課長)と言う。都内における、M3に関する相談件数は12年4月以降16年3月2日までに95件寄せられており、うち59件が学生による契約に関する相談だったという(表1参照)。相談内容をみると、契約者の平均年齢は23・5歳。平均契約金額は約8万9000円だった。
学生と発覚した会員には即刻全額を返金
 都によると「『50万円以上100万円以下の契約』に関する相談もあった」(同)としている。M3では、「学生であることが発覚した場合、その会員には即時全額返金を行っている。金銭的な被害は出ていないはずだ」(西山社長)と話している。
 都では、都内だけでなく関東近郊でも同様の学生勧誘に関する相談は多かったことを把握している(表2参照)。「神奈川県の消費生活センターに寄せられた同社に関する相談は(12年4月から16年3月2日までで)60件にのぼる」(同)と言う。ただ、「未成年の学生に関する相談は聞いていない」(同)としている。
 M3によると、13年9月以降、20代前半の若年層会員が急増。都からは、消費生活センターに寄せられる、学生契約に関する相談が増加しているとして、14年1月に改善指導を受けていたという。同社によると、13年9月以降は、学生の会員登録が発覚した際には、退会させた上で、全額返金処理を実施していたという。
 M3では行政指導後、25歳以下の会員に対する身分確認のチェックを厳格化するなど、コンプライアンス体制の強化に取り組んだ(表3参照)が、消費生活センターへの相談件数の増加を食い止めるには至らなかった。都から「改善がみられなかった」と判断され、15年12月に特商法に基づく立ち入り検査を受けることになった。都では「15年11月の時点で相談件数が30件を超え、前年の相談件数を上回る勢いだった」(同)と話しており、3月7日時点で「相談件数の増加傾向は現在進行形」(同)と捉えているという。
立入検査を自ら公表、コンプライアンス強化実施
 M3では、立入検査を受けて、その事実を自主的に公表、コンプライアンス委員会の立ち上げや、会員規約の改定など、さらなるコンプライアンス強化に取り組んだ(表4参照)。
 規約改定では(1)新規登録下限年齢を20歳から23歳に引き上げ(2)25歳以下の新規登録者の配送先は登録住所のみに設定(3)登録者自身の身分などを申告する「登録状況申告書」を新たに用意(4)16年1月1日以降の新規登録者に登録状況申告書」の提出を義務付け(5)16年1月1日以降の新規登録者に身分証提示を義務付けた。
 だが、処分をまぬがれることはできなかった。都では9カ月間という業務停止期間の設定について、「処分内容の決定にあたって弁明の内容や、立入検査後の是正の取り組みを参考にしたことは間違いないが、違反項目が多かった」(同)と説明している。
 都が認定したM3の違反項目は(1)名称・勧誘目的の不明示(2)不実告知(3)重要事項不告知(4)概要書面の不備(5)契約書面の不備(6)適合性原則違反109640の6項目。
 概要書面の不備について都では、「特定利益を得るために必要な、本件商品の数量および販売価格について記載していなかった」(同)と指摘している。
 契約書面については、「記載義務事項を複数の書面に分割し、かつ、定期購入契約の対象となる商品の数量および金額について記載していなかった」(同)ことから不備があると判断したという。M3では「概要書面の記載内容の見直しと、契約書面の記載義務事項の一元化を、顧問弁護士のアドバイスを受けながら進めている」(西山社長)と言う。
(1) 弁護士など外部委員を招聘してのコンプライアンス委員会の隔月開催(2)会員の多い地域でのコンプライアンスセミナーの開催(3)公式ホームページ上へのコンプライアンス解説コンテンツの掲載(4)タイトル昇格者向けのコンプライアンステストの実施(5)法定書面の記載不備項目の是正109640の五つに取り組み、「健全な組織作りに全力で取り組む」(西山社長)としている

インタM3西山啓道社長成熟した大人度の高い組織を構築する
 東京都から9カ月の業務停止を命じられたM3の西山啓道社長は3月8日、本紙の取材に応じ、処分に至ったこれまでの経緯や今後の対応について語った。

(続きは「日本流通産業新聞」3月10日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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