コロナ禍で急拡大したEC市場では、人材の採用が活発化している。スタートアップ企業が、1年で2桁人数の採用を計画するケースも少なくない。フレッシュドッグフードのサブスクを展開するスタートアップであるPETOKOTOでは、22年に入り5人を採用。22年中に20人の採用を見込んでいるようだ。近年の採用市場では、「パーパス(企業の存在意義)」に注目が集まっている。求職者などを対象に行われたアンケートでは、今後の就職、転職活動においてパーパスを意識するという回答が8割を超えたという。特にスタートアップ企業では、パーパスを意識した求人を行い、採用につなげているケースも多い。コロナ禍で採用方法や働き方が変わったことにより、採用市場にも変化が出てきている。若年層の求職者は、働く目的や意識も、従来とは変わりつつあるようだ。
■「パーパス」重視倍増
近年の採用市場では、?その企業が、何のために存在するのか?を意味する「パーパス」という言葉に注目が集まっている。パーパスは経営に関する考え方や価値観など。いわゆる「経営理念」に近い言葉だが、パーパスは、「社会とのつながり」をより意識しており、時代の変化の中でも揺るがない、根源的なものなのだという。
ビジネスSNS「Wantedly(ウォンテッドリー)」を運営するウォンテッドリーが、求職者など1340人を対象に行ったアンケートによると、入社時にパーパスを「かなり重視した」人は年々増加傾向にあり、直近5年間で倍増しているという。「特に30代以下の世代はその傾向が強い。『収入よりも働く意義』という考えが定着しつつある」(担当者)と話す。
同社がアンケートで「これから就職・転職する際パーパスをどの程度重視するか」を聞いたところ、「かなり重視する」が36%、「そこそこ重視する」が50%と、8割以上を占めたという。
前出のPETOKOTO(本社東京都)は、22年に入りすでに5人の採用を行った。「成長性に期待してくれる人はいるが、『ペットを家族として愛せる世界へ。』という、当社のミッションに共感してくれる人が多い」(大久保泰介社長)と話す。
ドッグフードをECで販売するスタートアップであるバイオフィリア(本社東京都)の採用担当も、「なぜこの会社が存在するのか」「なにをしているのか」といった、まさにパーパスの部分の発信を心掛けているという。
「当社で言えば、動物福祉や保護犬への寄付活動などの発信が多い。単に売り上げを求めるだけの企業ではなく、社会に貢献している企業であることを伝えている」(同)と話す。
競争が激化する人材市場で優秀な人材を確保するため、パーパスの整備に乗り出す企業も少なくないようだ。
■副業者を口説く
PETOKOTOによると、エンジニアなど、特に売り手市場の求人においては、「まずは副業として始めてもらい、採用につなげる」のも、有効な手段の一つだという。「優秀な人材は、どこの企業でも重宝されている」(同)からだ。「副業やフリーランスで間口を広くしておき、優秀な人材の勧誘につなげている部分もある」(同)と話す。
副業からの採用は、前出のバイオフィリアでもあるようだ。「副業として業務委託をすることが、体験入社のようになっている。6月も、週1勤務の業務委託から始まったスタッフが、正社員になる予定だ」(岩橋洸太社長)と話す。
バイオフィリアでは、求人媒体などの情報の「透明性」を意識しているという。「社員の写真やインタビューを掲載し、どんな人かが分かるようにしている。どんな人がどんな意識で働いているかを伝えることも重要だと考えている」(同)と話す。
■未経験でウェブマーケ
ECで医薬品や健康食品を販売するオズ・インターナショナル(本社東京都)は、コロナ禍が採用の追い風になっているという。
(続きは、「日本流通産業新聞」」5月26日号で)
【通販・EC企業の人材採用】 「パーパス」明確化が鍵/未経験歓迎で優秀人材確保(2022年5月26日号)
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