【取引DPF消費者保護法】 あらゆるBtoC取引対象/DPFのルール整備活発化か (2022年3月10日号)

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 デジタルプラットフォーム(DPF)での商取引における消費者保護を目的とした新法「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(取引DPF消費者保護法)」が5月1日に施行される。DPF提供者に対し、消費者トラブル防止に向けた努力義務や情報開示を課す同法は、DPFでのあらゆるBtoC通信販売取引を対象としており、通販・EC事業者に与える影響も広範囲なものになりそうだ。施行を間近に控える中、成立までの過程や課題、予測される事業者への影響などをまとめた。

■市場拡大で課題顕在化

 「DPF消費者保護法」は、消費者保護の観点からDPF提供者に新たなルールを設けるものだ。19年12月から21年1月にかけて消費者庁が主体となり実施された「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会(DPF検討会)」での検討内容が法の下地となっている。
 検討会が発足した背景には、DPFの市場規模や社会的役割の増大とともに、消費者トラブルがより顕在化したことが上げられる。
 法案の提出は、当初検討会のアウトプットの一つとしてその可能性が発足時から示唆されていた。20年初頭の新型コロナウイルス感染拡大によるEC利用層の拡大、マスクや消毒液など衛生用品をめぐる取引のトラブル増加なども、法規制の機運を高める要因になったといえる。
 井上信治消費者担当大臣(当時)は法案提出時、「通信販売の商取引で第三者的な地位にあるDPFの役割を、法的に明らかにするもの」と、その狙いを説明している。
 「取引DPF消費者保護法」の適用対象は、BtoC取引が行われる、あらゆるDPFとしている。商材や規模は問わない。「Amazon(アマゾン)」など、一定以上の規模を持つ指定のDPFを対象としている「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(DPF取引透明化法)」との大きな差異といえる。
 そのため、一般的なECモールだけでなく、ネットオークションや購入型クラウドファンディングサイトなども対象となる。「製品やサービス形態を問わず、あらゆるDPFを対象にするというのは、意欲的な要素かつ新法の大きな特徴」(DPF検討会・中川丈久座長代理)とその特性を説明する。


■自主的取組の要請を前面に

 「取引DPF消費者保護法」の具体的な内容としては、別表の各項目が上げられる。その中でも運営のルールとしてDPF提供者に新たに課せられるのが、取引環境の改善や円滑な紛争解決促進に向けた努力義務だ。
 具体的には、(1)販売事業者と消費者間の円滑な連絡手段の確保(2)販売条件などの表示に関し、消費者からの苦情や申出に基づく調査や対応(3)販売事業者に対する所在地確認などのための情報提供要請─の3点を、消費者保護のための努力義務として提示した。
 検討会では、DPF提供者による創意工夫の尊重を前提とした制度作りが議論されてきた。自主規制の促進を前提とした内容は、その反映ともいえるだろう。

(続きは、「日本流通産業新聞」3月10日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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