人材確保と海外販売の強化を目的に、外国人を採用する通販企業が増えている。海外からの問い合わせや販路開拓など、日本人だけでは対応しきれない分野での活躍に期待している。厚生労働省の調査によると、14年10月時点で国内の外国人従業員は約78万人と過去最高を記録した。外国人従業員の増加に伴い、外国人従業員を受け入れる細かな体制作りが要になりそうだ。
海外マーケティングで活躍
アフリカ各国を中心に、通販サイトで中古車の海外販売を行うビィ・フォアード(本社東京都、山川博功社長)では、46人の外国人が勤務している。総従業員に対し、外国人従業員が約3割を占めている。国籍は26カ国とさまざまで、30の言語に対応することができる。外国人従業員の平均年齢は約30歳。働き盛りの年代であるため仕事に対する意欲も高い。
11年の外国人従業員は2人だったが、12年に18人となり、そこから急速に増加した。外国人向けの求人情報サイトに登録し、中途採用を受け付けている。本人だけでなく、家族が求人情報を見つけて応募することもあるようだ。
出身国の異なる従業員による混合チームで、営業や現地のマーケティングなどに取り組む。サイトの翻訳や電話の対応などを行うこともある。
社内でのコミュニケーションは、日本語が中心だ。外国人従業員同士の母国語が異なるケースも多いため、自然とそうなったと説明する。海外対応で一番必要な英会話教育も進めており、社内体制の強化を図っている。
テレビ通販のオークローンマーケティング(本社愛知県、ハリー・A・ヒル社長)では新卒採用においても外国人を積極的に採用している。現在、グループ全体でカナダ、米国、英国、中国、韓国、ベルギーの6カ国から23人が勤務している。特定の部署に配属しているのではなく、商品開発担当部署やマーケティング担当部署など、各社員が能力を発揮できる部署に振り分けている。
同社では多様な人材を活用する「ダイバーシティ」を戦略的に推進している。国籍だけではなく性別や年齢にとらわれることなく、活躍できる人材の採用を進めている。
多国籍の従業員が在籍する効果として、「互いの価値観や意見を尊重しながら、グローバルな視点から物事を考察し行動できる。個々では成しえない強力なチームワーク力を生み出している」(広報)と説明している。
中小の通販企業も、外国人の採用に乗り出している。アンティークドールを販売するボーダレス(本社大阪府、表秦之社長)は、アジア圏の海外販売が活発になってきたことに対応するため、アジア地域の従業員を採用。30人中5人が外国人で、現在はタイ人とベトナム人のインターンシップも受け入れている。
表社長は「日本人だけではつかみ切れない各国の最新情報を、従業員のコネクションを活用することで早く手に入れることができる」と話す。今後も積極的に採用を進めていく予定だ。
求められる社内体制
外国人採用にさまざまな利点がある一方で、文化の違いから、日本人との意思疎通がうまくいかないこともあるようだ。国籍や宗教でタブーとされていることがあるため、社内で食事会などを開催する際は、事前に下調べをする必要もある。
出身国に出張する際、会社によってはそのまま長期休暇を認めるケースもあるが、1カ月近く欠勤が続いたケースもあった。ビィ・フォアードでは、「(長期休暇が)慣習として根付いているため、日本人スタッフとの間に差が生じている。対策を講じる必要がある」(広報)と話す。
厚生労働省の取りまとめによると、14年10月までの外国人従業員は前年同月比9・8%増の78万7627人だった。日本人の労働人口が減少する中、外国人に頼る企業は今後も多くなりそうだ。外国人従業員を受け入れやすくするために、社内制度や文化の違いを理解する取り組みが求められる。
〈通販企業〉 外国人採用広がる/人材確保、海外対応に期待
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