前回、米国では「D2C」「PB商品のブランド化」が加速するトレンドについてお伝えしましたが、アマゾンや大手小売りのPB商品の台頭により、大手メーカーがEC化やデジタル化を急いでいる現象が起きています。
その一例として、1年前のイベントでD2Cの成功事例として紹介されていた企業を、大手メーカーが買収する事例が出てきました。買収した企業の持つ顧客基盤を獲得するだけでなく、デジタル化に対応する人材やノウハウを獲得することが一番の狙いのようです。それくらい「EC直販」「デジタル化」はメーカーとして容易ではないことがうかがえます。
ミレニアルを分析
D2Cのマーケティングとして基本となるのが「世代×価値観」です。イベントではミレニアル世代に特化したニューヨーク発のD2Cサプリメントブランド「care/of」の事例が紹介されていました。
「care/of」は特に「デジタルネーティブ世代」にどうアプローチするかを調査しました。独自調査により、サプリメントは若者にとってあまり良い体験がなく、潜在的な不満があることを把握。商品のパーソナライゼーションに力を入れ、ダイエット、飲酒対策など顧客の目的をウェブでヒアリングし、それを基にどういうサプリがお薦めかをユーザーに提案しています。
日本企業では、デジタル接点がメインとなる世代に対する潜在ニーズの調査手法はまだ確立されていな状況であり、大手メーカーを中心に本格的に取り組む動きが出てくると予測しています。
スマホ内の棚を意識
また「デジタルシェルフ」という概念も注目を集めています。
例えば、アマゾンなどのスマホ検索で閲覧できる限られた画面「売り場の棚」の中で、いかに注目を集めてシェアを獲得するかという手法も必要となっています。
大手メーカーは、実店舗の店頭ありきで商品やパッケージを企画してきましたが、これからは、スマホ画面の最初の画像(サムネイル)を想定して、競合商品が並ぶ中で目を引き、早く商品の特徴を理解してもらえる取り組みも必要です。
実際にイベントでは通常パッケージの裏に表記するような内容を、表に大きく表示することによりデジタル化に対応した事例も紹介されていました。
日本でも間もなく、ECの検索画面で見栄えの良さを想定したパッケージを開発する取り組みが出てくると予想しています。
速報で2回にわたり米国の状況をお伝えしました。アマゾンの巨大化、小売りのPB商品へのシフトにより、ブランドを持つ大手メーカーが「D2C」を軸にデジタル対応を急いでいる状況がありました。日本でも2年以内にこのような動きが出てくる前提で、今からD2C戦略を練っていただければと思います。(おわり)
〈プロフィール〉
いつも.上席コンサルタント 高木修氏
いつも.のECコンサルティングノウハウを開発する部門の責任者を行いながら、大手企業のEC事業拡大のコンサルティング業務も手掛けている。米国在住経験もあり、海外ECモデルの変遷にも精通し、6年連続で米国視察を行い、米国の小売りおよびEコマースの最新動向も収集・整理して日本での活用を提案している。
【速報 米国ECの新潮流~ラスベガス視察レポート~】〈後編〉 大手がD2C買収でデジタル化推進
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