家庭で気軽に使える染毛用商品の表現について、気をつけなければならないことを教えてください。(化粧品通販会社担当者)
「化粧品」と「医薬部外品」で可能な表現が異なる
良く使用される「ヘアカラー」「白髪染め」といった表現ですが、分類によって使用できる表現の範囲が異なります。化粧品と医薬部外品では、「化粧品=『染毛料』=ヘアマニキュア、カラーリンス、カラートリートメント」「医薬部外品=『染毛剤』=ヘアカラー、ヘアダイ、白髪染め、おしゃれ染め」という住み分けがされており、通常の化粧品の場合は、「ヘアカラー」「白髪染め」という名称を用いることが不可という判断となります。
ただし名称ではなく、「カラーリングをする」「白髪を染める」といった動作を指す言葉の使用は、日本語としてある程度自由が利くものと解釈できます。
化粧品だから「カラーリングをする」「白髪を染める」という言葉の全てを使用できないということではなく、誰が見ても”染めている”のではなく、”着色している”という意図が伝わるのであれば、可能な範囲と考えて良いでしょう。
結局は、化粧品(着色料)なのに、医薬部外品的な作用(ケミカルな白髪染めや脱色ができるというような作用)があると誤解されるようだと、不可と判断される可能性が高くなります。
また、広告媒体社による考査におきましても、「白髪染め」という表現を不可としつつも、着色でかつ、洗髪とともに色落ちするということが明らかなのであれば、「白髪を染める」というニュアンスは可としている場合もあるようです。
また、「白髪染め」としつつも※印を付け『※着色すること』と打ち消しを行っているものも見かけます。
一方、医薬部外品の染毛剤に関しましては、日本ヘアカラー工業会による広告の自主基準が表現の指標になるでしょう。
・簡単(手軽)に染められます…×
・髪にやさしい(マイルドな)ヘアカラー…×
・髪を傷めない○○カラー…×
・部分染めが簡単…○
※使用法に関する説明であり、安全性に関して誤認を与える恐れがない。
・やさしい色に染めるヘアカラー…○
・やさしい香りのヘアカラー…○
※「やさしい」が染めた色および香りの説明であり、安全性の保証に該当しない。
・マイルドな使いごこちのヘアカラー…○
※「マイルド」が使用感触の説明であり、安全性の保証に該当しない。
ヘアカラー(染毛剤)は刺激も強く、かぶれる等の人体トラブルが発生する可能性がありますので、あえて基準として、髪に対して「やさしい」「マイルド」「いたわる」という表現そのものを使用しないとしているのではないかと思われます。
一方、化粧品である染毛料では、化粧品の定義としても示されている通り、あくまでも作用の緩和なものですので、「髪にやさしい」「マイルド」「いたわる」に関しては、事実であること、かつ安全性の保証に当たらないことを前提に、使用可能と考えられます。(月1回掲載)
〈稲留万希子氏 プロフィール〉
東京生まれ。東京理科大学卒業後、大手医薬品卸会社に就職。在職中に出かけたアジア旅行で各地に根付いている東洋医学に興味を抱き、国際中医専門員、薬事法管理者の資格を取得して独立。数々のサイトをチェックしてきた経験を基に現在は、”ルールを正しく理解し、味方につけることで売り上げにつなげるアドバイス”をモットーとした「薬事法広告研究所」サービスを展開中。
【ネットショップのための薬事広告のイロハ】連載66 染毛用商品の気をつけなければならない表現は?
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