【ビジョナリーホールディングス 執行役員デジタルエクスペリエンス事業本部本部長 ECエバンジェリスト 川添隆氏】〈企業の枠にとらわれず活躍〉積極的に知見発信、情報格差減らす

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 「メガネスーパー」のEC事業やオムニチャネル施策をけん引する、ビジョナリーホールディングスの執行役員デジタルエクスペリエンス事業本部本部長・川添隆氏は、企業の枠にとらわれない活躍をしている。「ECエバンジェリスト」という肩書を自称し、積極的にノウハウや知見をシェアすることで、EC業界の情報格差を減らそうとしている。川添氏は自らの発信により、人のためになることは、自分にメリットをもたらすと語る。4月22、23日に開催する「通販・EC EXPO」でも2講座をプロデュースし、6月8日にはECイベント「ZOE祭(ゾエまつり)」を主催する。型にとらわれない川添氏の働き方の根源に迫る。

■発信するメリットも

 ─メディアやセミナーに積極的に登場する理由は。
 実務者として実績を積んできましたが、私自身はしっかりとマーケティングの勉強をしてきたわけではないですし、専門家として研究しているわけでもありません。さまざまな人の巡り合わせで、学びを得て今があります。
 他の会社の相談を受けるようになり、どこの企業もつまずくところや課題はだいたい似ていることが分かりました。同じ課題なら、同じノウハウで突破できるはずです。だったら知識を独り占めしている場合ではない。みんなが突破している壁なら早く突破してほしいと思います。
 皆さんの役に立つ情報を発信することのメリットもあります。例えば「メガネスーパー」は、国内で初めてある決済手段を導入しました。情報発信を続けてきたことで、「メガネスーパーならプロダクトのことを理解してくれる」と思ってもらえたからこそ実現できたことだと思います。もちろん、「導入後も情報発信して、プロダクトの普及に貢献してくれる」という期待もあったと思います。
 決済会社は「メガネスーパー」よりもEC事業規模が大きい企業に打診することもできたはずです。発信力を高めることも一つのスキルだと考えています。


■人と違うことをやる

 ─自らが取材を受けたり、セミナーに登壇するのは分かりますが、川添さんはモデレーターやインタビュアーを務めたりしています。そこまでやる理由は。
 パネルディスカッションのモデレーターは、自社の取り組みを話す機会が減りますし、あまりPRできません。ただ、モデレーターをやるメリットもあります。事前の打ち合わせなどでスピーカーの方に深い部分まで話を聞くことができます。インタビュアーも同様です。そこで聴くことができた話は、私自身の勉強になります。
 人と同じことをやらずに、レアな選択肢を取っています。その方が新しい知見を得られますし、周囲の関心を集めることもできます。


■独自性に引かれ企画

 ─川添さんが「通販・EC EXPO」でビームスやヤッホーブルーイングとセッションすることを決めた理由は。
 それぞれオリジナリティーがあります。「こうしていきたい」というブランドの強い意思があります。
 ビームスの矢嶋正明さんは、企業やブランドにとって正しいと考えたことを、慎重に検討しながらも難易度が高いことを実現できている点がすごいと思います。倉庫を一元化したり、スタッフ自身がコーディネートのコンテンツを発信したりと、業界でもいち早く高度なオムニチャネルの取り組みを大胆に実施しています。個人のためでもEC部門のためでもなく、全体最適のために大変なことでも迷いなく実行している点が素晴らしいと思います。
 ヤッホーブルーイングは、私も同社のクラフトビールの1ファンです。商品開発もPRも他社がやらない戦略を取っています。ビール市場の大きなシェアを取りにいくのではなく、自社のメッセージが伝わる領域を作り、独自性に磨きをかけています。人間味を感じるブランドであることも引かれる点です。


■自主イベントも開催

 ─6月には「ZOE祭」という交流と学びのECイベントを主催する。自主イベントをやるようになった経緯は。
 クローズドでやっている勉強会のメンバーと「ECイベントをやってみたい」と感じたのがきっかけです。「ZOE(ゾエ)」と私の名前が入っていますが、自己顕示欲ではなく、行こうかどうか迷った人が、「川添が言うなら仕方ない。行こう」と思ってもらえたらという意図です。ある程度緩さを保ちながらも、意見が偏らないように人選したり、多様なジャンルの方が参加してもらえるように考えたりしています。
 これまでのイベントのやり方を踏襲するのではなく、クラウドファンディングで登壇できる権利を提供したりする新たな試みも行っています。


〈プロフィール〉
かわぞえ・たかし
 82年、佐賀県唐津市生まれ。総合アパレルのサンエー・インターナショナルで販売を経験し、サイバーエージェントグループのクラウンジュエル(現ZOZOUSED)へ。ささげ業務から企画、PR、営業まで携わる。10年、ガールズアパレルのクレッジに転じ、EC事業の責任者を務める。13年7月、メガネスーパーに入社。EC事業、オムニチャネル推進、ウェブに関わるすべてを統括。17年、ビジョナリーホールディングスのデジタルエクスペリエンス事業本部本部長に就任。18年より執行役員。


【記者雑感】
 川添さんの”強み”を垣間見たのは、カートシステム「Shopify(ショッピファイ)」のパートナー向けイベントでモデレーターを務めているのを見たときだ。メガネスーパーでは、「ecbeing(イーシービーイング)」を採用しているが、「ショッピファイ」も川添さんの知見や発信力を買い、モデレーターを打診。これが「ECエバンジェリスト」の力だと思った。川添さんの発信力は今後も高まりそうだ。

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