【リンナイ eビジネス推進室・前室長 福本啓史氏】顧客情報を商品企画に

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 メーカーECの成功例として言及されることが多いリンナイ。06年にECサイトを開設し、ガスコンロの交換部品や、通販専用コンロなどの売り上げを着実に伸ばしている。近年はECが全社的なデジタルマーケティングの中心となり、具体的な成果を上げ始めた。リンナイのEC事業を統括する「eビジネス推進室」の前室長、福本啓史氏に同社のEC戦略を聞いた。(インタビューは3月15日に実施。福本氏は4月1日付で「営業本部営業企画部PR室室長」に異動)

【通販会員40万人】
ーー06年に開設した御社のECサイト「リンナイスタイル」の会員数や売り上げ、取扱品目数などの現状を教えてください。
 「会員数は3月末時点で約40万人となり、2年前と比べて約2倍に増えました。取扱商品数は約7000品目です。ECの売上高は開示できませんが、交換部品のEC比率(全社の売上高に占めるECの割合)は15年度平均で約23%でした。EC比率は前年比1~2%上昇していますし、15年12月は単月で29%を超えました。ECサイトの利用拡大に手応えを感じています。交換部品以外にも、オリジナルの調理グッズや通販専用のガスコンロが好調です」
ーー通販専用のガスコンロは11年12月に発売した「ホワロ」に続き、昨年末、強火力で業務用コンロのようなデザインが特徴の「バーモ」を発売しました。通販専用商品の売れ行きは、どのように推移していますか。
 「売り上げは順調に伸びています。『ホワロ』は15年4月にリニューアルしたところ、16年3月期の年間販売台数が前期比約4倍、計画比約2倍に増えました。カラーバリエーションを変えたり、魚焼きグリルをトースターとして使えるようにしたりした結果、売り上げが一気に伸びました。『バーモ』も出足は順調です。どちらもデザインやストーリーにこだわっており、ターゲットを絞った商品です。棚のスペースに限りがある家電量販店などの一般流通では扱いにくい商品なので、通販サイトで販売しています」
ーーリニューアル効果で売り上げが4倍に増えたのは驚きです。
 「顧客の意見をデザインや機能に反映させたことがヒットの要因でしょうね。ネット通販の顧客にアンケートなどを実施し、商品に対する感想や要望を集めて商品企画に生かしました」

【ECは市場調査】
ーーECの顧客の要望を商品開発に生かせるのはメーカーの強みですね。
 「そうですね。ユーザーからの意見がきっかけとなり、キッチングッズやレシピ本などを商品化した例も少なくありません。そして、それらの商品は例外なくヒットしています。消費者のニーズをきちんと理解し、商品を開発しているから売れるわけです。商品開発において、消費者のことを理解することがいかに大事か、あらためて痛感しています」
ーー通販専用商品の成功事例は、通販以外の商品開発にも生かせるのでは。
 「実は、『リンナイスタイル』の会員データベースを活用し、店頭販売向けの商品開発にユーザーの意見を生かす取り組みを、徐々に強化しています。『リンナイスタイル』で交換部品を購入した会員については、所有しているガスコンロの型式を把握できます。商品をリニューアルする際、その商品の利用者にピンポイントでアンケートを実施し、生の意見を効率的に集めることができるのです。かつては、商品を売った後にユーザーの感想を直接集めることが難しかったのですが、通販の会員数が40万件まで増えたことで、マーケティングへの活用が可能になりました」
ーーどのようにアンケートを実施しているのでしょうか。
 「例えば、キャンペーンの応募条件としてオンラインでアンケートを行うこともありますし、料理コンテストなどのイベントを企画し、料理の画像と一緒にガスコンロや調理器具のレビューを投稿してもらうこともあります」
ーー顧客の属性分析も実施できますね。
 「顧客のデモグラフィック属性(年齢、性別、居住地域など人口統計学的な属性)を分析するのはもちろんですが、加えて、アンケートを通じて顧客の価値観を分析するマーケティング手法も取り入れています。商品ごとに顧客の価値観の特徴を分析し、その価値観に合わせたプロモーションを実施しています」

(続きは「日本ネット経済新聞」4月28日・5月5日合併号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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