〈楽天「共通の送料込みライン」〉 「優越的地位の乱用」回避/名称変更、退店支援策を実施

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三木谷浩史社長が名称変更や施策の実施理由を解説

三木谷浩史社長が名称変更や施策の実施理由を解説

 楽天は2月13日、「楽天市場」において3980円以上の購入で送料を無料にする施策について、「優越的地位の乱用に当たらない」(三木谷浩史社長)と説明した。施策名称を「共通の送料無料ライン」から「共通の送料込みライン(送料込み施策)」と変更し、施策を許容できない店鋪に向けて経済補填(ほてん)も含めた退店支援も行うと発表。当初の予定通り、3月18日に「送料込み施策」を実施すると明言した。
 施策の名称変更については、「今回の施策で店鋪が価格を調整できず、(送料負担の)コストが増えるとの誤解がある。『送料無料』という言葉が独り歩きしてしまったことを反省している。正直、『送料無料』の方がエンドユーザーは理解しやすいが、報道を受けて誤解がないように名称を変更した」(同)と説明。公正取引委員会の立ち入り検査の影響については、「あったかないかと言えば、あった」(同)と話した。
 「商品価格をわれわれの裁量でコントロールするつもりはない。優越的地位の乱用には当たらないと認識している」(同)と、誤解を解くことで公取委にも理解を得られると考えている。


■退店者に経済的補填

 「送料込み施策」の導入により、やむを得ず「楽天市場」から退転する店鋪には、移転先となる販売サイトを既存客に案内できるようにしたり、出店料を払い戻したりする。詳細は2月中に店鋪へ案内する。
 「(『送料込み施策』で)97%の店鋪はいいけど、3%は厳しいというような状況があるかもしれない。しかし、消費者保護の観点からも分かりやすいショッピングの場を作ることが極めて重要なポイントであり、日本発のマーケットプレイスがアマゾンのような非常に大きな資本と対抗していくためにもやらなければならない」(同)と理解を求めている。
 これまで大型商品や冷凍・冷蔵商品、沖縄・離島向け商品、酒類など「送料込み施策」の対象外商品を定めていたが、新たに新品の本・音楽ソフトも対象外にすると発表した。
 「もともと、『送料無料』の商品の注文が全体の80%ある。対象外にした商品が全体の12%ほどあるため、結果的に今回の施策で影響を受けるのは注文全体の8%ほどだ」(同)と影響が限定的であることも説明した。
 3月18日の導入予定に関しては「施策の開始に向けて何万という店鋪が準備をしている。今さら戻してもらっても困るという声も非常に多い」(同)と話した。


【記者の目】”楽天のリスク”説き、店鋪に理解求める

 楽天の三木谷浩史社長は、「送料込み施策」がアマゾンへの対抗策としてやらなければいけない取り組みであるということを強調した。楽天としてもリスクを犯して店鋪支援に注力していることを説明することで、店鋪に理解を求めていると感じた。
 三木谷社長は、「ルールを変更する際に100%の店鋪が全部ハッピーならいいが、それは難しい。しかし、これをやらないと全部の船(『楽天市場』)が沈んでしまう」と説明。
 他にも「楽天のエコシステムで3000億円分のポイントを生み出して必死で『楽天市場』を支えているが、そのうち限界が来る。送料がバラバラだと買いにくい。店鋪の売り上げが沈んでいく」とも話した。
 さらに「当初は『アマゾンプライム』と同じくらいの送料込みライン(2000円)にできたらすごいことになると思ったが、店鋪の声を聞くと経済的に難しい」と店鋪の状況を考慮し、ルールを緩和した経緯も説明した。
 物流サービスについても「もともと自社物流はやりたくなかった。資金がたくさんかかる。しかし、2年前に物流クライシスがあり、宅配会社は荷物を受け取らないし、配送料を倍にするという。これでは店鋪が耐えられないと思い、覚悟を決めて2000億円を投資すると決めた。物流は大赤字だが、それでもやる」と自らも身を削っていることを強調した。
 過去の事例を引き合いに出し、「従量課金制の導入時もさまざまな反発があった。しかし、従量課金を導入したからこそ『楽天市場』が2兆円、3兆円という流通総額を生み出している。今回は楽天がもうかるという話ではなく、店鋪がもうかることをやろうという話だ」とも説明し、理解を求めた。

退店希望者向け支援策も発表

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記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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