【こだわりの逸品を全国展開 特産品EC】第256回 〈有機梅専門ECサイト「やさしい梅屋さん」〉/環境にもやさしい梅の有機栽培を広めたい

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深見優氏

深見優氏

 和歌山県上富田町、熊野古道の玄関口「口熊野」に自社農園を持ち、1940年の創業以来、約80年にわたり梅干しの製造販売を行っている深見梅店。4代目の深見優氏は、無農薬・無肥料の梅の栽培、無添加の梅干し作りに取り組み、「有機JAS認証」を取得。有機梅専門ショップ「やさしい梅屋さん」を設立した。梅作りへの思い、ニーズ、客層などについて、話を聞いた。

◆思い・取り組み

 農薬、化学肥料が必須だった梅栽培をやめ、広大な農園全体を自然の状態に戻し、有機栽培に取り組んできだ深見さん。大きな決断のきっかけは、”家族のために”という思いだった。
 「結婚して子どもができ、家族が増えたことが転機になりました。結婚してから住んでいた家は通常栽培の梅畑の目の前にあり、除草剤を撒いた日は臭くて窓を開けられず、洗濯ものも干せない、飼っている小型犬が梅畑の脇道を散歩中に嘔吐するといった状況でした。家族が増えたことで、自分がなりわいとしている梅に対して『胸を張って安心・安全なものを作りたい。家族に食べてもらいたい』と思うようになり、無農薬・無肥料の梅栽培から始めました。化学添加物や化学的なものは畑に持ちこまない、そしてなるべく自然のままに、草刈りや農作業は全て手作業で行っています」
 妊婦や赤ちゃんも食べられる梅干し「あまくち味」の商品開発では、資金調達のためクラウドファンディングに挑戦し、目標を達成。試作を繰り返して商品化に成功し、現在も試作開発を継続している。


◆サイト作り

 サイトでは写真や動画を多く使い、梅栽培の様子、梅干しの製造工程、安全性、梅を使ったレシピなど、丁寧に分かりやすく伝えている。
 「動画や写真については極力、農作業をしている私たちの視点で撮影しています。お客さまには、梅干しの作り方の紹介や当社の動画が人気です。現在、オーガニックとして欧米で梅の需要が高まっており、海外からの注文(海外取引先とのやりとり)が多くなっています。そのため、海外の人も分かりやすく見られるよう、文章で伝えるよりも映像での説明を多く取り入れています。今後はさらに、海外の人に分かりやすい見せ方を追求したいと思っています」


◆声・今後

 ネットショップ利用者はリピーターが多く、売り上げは少しずつだが着実に伸びているという。
 「食に対して意識の高いお客さまが多いように感じます。印象的だったのは、『子どもと一緒に漬け込んで、子どもが20歳になったときに一緒に飲みます』と言って、梅酒の原料に有機梅をご購入いただいたこと。大切な場面に当社の梅を選んでいただき、とてもうれしかったです。今後も、『食べる人にも、栽培する人にも、環境にもやさしい梅の有機栽培をこの町から広めたい。そして、栽培する仲間を一人でも増やしたい』という夢に向かって発信していきたいと思います」


〈運営会社概要〉
【運営】有限会社深見梅店
【開設時期】2000年
【スタッフ数】2人
【ショップ形態】自社ショップ
【導入システム】shopserve
【配送委託先】日本郵便

業界初のオーガニック低塩梅干し「うすしお味」

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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