【真相追跡 <定期販売トラブル>】<最終回> "ルール整備""消費者教育"求める声も

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 前回までに消費生活センターへの定期購入に関する相談が急増した理由を紹介した。定期購入型通販市場の拡大とともに、新規事業者の通販参入が進み、新たな消費者が通販を利用する機会が増えたことも、相談件数増加の背景にはあった。利用者の端末(デバイス)がパソコンからスマホに移行しつつあり、閲覧画面が小さくなったことも少なからず影響していたようだ。今後、再びトラブルが起きないようにするためには、業界内のルール整備や消費者教育の徹底を求める声も上がっている。


 サプリメント通販サイト「うるおいの里」などを運営するモイストは、「初月無料」などの特典をPRし、顧客に定期購入を促していた。こうした販売手法は以前から存在している。だが、以前は相談件数が短期間に急増するほどトラブルが顕在化することはなかった。
 これまでの通販事業者との大きな違いは集客手法にあったのではないか。モイストはアフィリエイト広告などで一気に新規顧客を獲得した。アフィリエイターがブログやSNSなどでモイストの商品を紹介したことで、定期購入を利用したことのない新たな消費者を集めることに成功した。
 定期購入に不慣れな消費者は「初月無料」などのコピーだけを確認し、同じページに書かれている「4カ月間の定期購入が条件」だということを理解せずに、購入ボタンを押していた。商品購入を促したいアフィリエイターが、消費者にとって耳あたりの良い特典ばかりを強調していたことも影響している可能性はある。
 モイストの顧客の大半はスマホ経由で商品を注文しているという。定期購入通販サイト向けのランディングページ(LP)作成ツールを導入し、画面遷移することなく、少ない手間で購入手続きを完了できるようにしている。
 定期購入に不慣れな消費者は、画面の小さいスマホで詳細情報への注意を払わずに購入手続きを済ませていたのかもしれない。


■自主ルール整備の動きも

 新たな消費者の流入やデバイスの変化に対応するため、新たなルールを整備しようとする動きもある。
 健康食品の定期購入サイト運営するオンライフ(本社東京都)の高崎航社長は、「定期購入の表示に関する明確な指針がないのも問題」と考えている。高崎社長の呼び掛けにより、定期購入型通販の適正化のための方法を議論する「通販適正販売推進協議会」が7月6日に発足した。
 消費者に誤解を生まないためのサイト上での表示方法や、顧客からの問い合わせへの対応方法などについて事業者同士で意見を交換するという。今後は関係省庁などとも協議し、年内に定期購入のガイドライン制定を目指している。
 通販コンサルタントのA氏は「事業者が定めた自主ルールで販売方法を制限するには限界がある」とみている。一部の事業者が加盟している組織でルールを整備しても影響力が小さく、業界全体には波及しないというのだ。
 「ルールを守る事業者を出し抜いて売り上げを伸ばそうとする事業者が必ず現れる。もし本当に規制するのであれば法律を改正し、守らざるを得ないルールを設けなければ意味がない」と話す。


■消費者教育も必要か

 通販業界が自主規制のためのルールを作るだけではなく、消費者教育を強化する取り組みも必要だとの指摘がある。
 定期購入型通販サイトを運営するB氏は、「サイトに記載されている契約条件を見落として注文している消費者に落ち度はないのか。われわればかりが責められるのも困る。消費者にももっと勉強してもらいたい」と嘆く。
 通販市場がさらに拡大していくためには、リテラシーの低い消費者を取り込むことは必要不可欠だ。通販という便利な手法を使いこなしてもらうためにも、その使い方を覚えてもらう必要がある。
 行政や業界団体が先導し、改めて効果的な消費者教育の方法を考える価値はありそうだ。
      (おわり)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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