【ブロードメディア・テクノロジーズ 久保利人社長】二つの新サービスを本格展開/国際通信の高速化などに貢献

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 各種ネットワークサポート事業を行うブロードメディア・テクノロジーズ(以下BMT、本社東京都、久保利人社長、(電)03―6439―3770)は、世界最大級のCDN(コンテンツデリバリネットワーク、※1参照)配信プラットフォームを展開するアカマイ(本社米国)の国内正規代理店として知られている。BMTでは2020年、二つのICT(情報通信技術)関連サービスの本格展開を開始する。一つは、クラウド型WAN(※2参照)高速化・最適化サービス「アリアカ・グローバルSD―WAN」。海外展開を行う企業の通信の高速化に貢献する。もう一つは、対話型AIプラットフォーム「Passage(パッセージ) AI」。数あるチャットボットの中でもAIの学習能力が高く、正答率の高さにも自信を持っているという。初期導入費用が抑えられるのも特徴だ。二つの新サービスについて、久保社長に話を聞いた。

■SD―WANで40倍高速化も

 ─アリアカのWANサービスの提供を本格化するということだが、経緯を教えてほしい。
 当社は、米国のアカマイの正規代理店として、CDN配信プラットフォームの提案を、中核事業として行ってきた。アカマイのCDNは、世界中に多数のサーバーを置き、ネットワークを展開することにより、各社のウェブサーバーへの負荷を軽減。ウェブの配信スピードの高速化や、セキュリティーの向上に貢献するというものだ。当社が提案するアカマイのサービスは、クライアントからも高い評価をいただいている。ただ、ウェブサーバーは、画像や記事を配信するものであって、それ単独では機能しない。その後ろには、各種アプリケーションサーバーやデータベース(DB)サーバーがあり、連動して初めて機能を発揮する。急速に、クラウド化・グローバル化が進んでいる、アプリケーションサーバーやDBサーバーの部分でも、当社がお手伝いできることはないかと考え、米国のアリアカが提供するクラウド型WAN高速化・最適化サービス「アリアカ・グローバルSD―WAN」の提案を始めることにした。
 ─どのようなサービスか。
 簡単に言うと、世界規模で、複数の企業が乗り合いで使う、大型の専用線を引くことにより、通信を高速化するサービスだ。通常のインターネット通信では、世界中のさまざまなネットワーク事業者を迂回しながら、情報が届けられる。最短の経路を指定できるわけではないため、通信の速度はどうしても遅くなってしまう。アリアカのサービスでは、世界中の至るところから、アリアカのグローバルネットワークに直接アクセスできる。そのため、グローバルな高速通信が可能になる。例えば、東京の本社と、ドイツの支店との間で、高速にデータのやりとりをするといったことが可能だ。従来のインターネットが各駅停車の鈍行列車ならば、アリアカのWANサービスは、新幹線やリニアモーターカーのようなものだ。
 しかも、アリアカのWANサービスは、アプリケーションレイヤー(層)のクラウド利用を前提として開発されている。そのため、アマゾンウェブサービスやオラクル、グーグル、マイクロソフトなど、業務によく使う主要なクラウドサービスとはあらかじめつながっており、スムーズな連携が可能だ。グローバル化が進む中、世界中の拠点から、同一のクラウドサービスを利用したいというニーズが高まっている。そうしたニーズにも応えるサービスだ。
 ─どの程度の高速化が期待できるのか。
 独自の技術でデータの大幅圧縮・最適化も行っているため、さらなる高速化が図れている。すでに導入した企業では、レスポンスタイムを30~40倍高速化できたという事例も報告されている。テスト導入している国内企業でも、高速化の成果が続々と挙がっている。
 このサービスは、中国との迅速なやりとりにも役立つ。中国と通信を行う際、通常は、大規模検閲システム「グレートファイアウォール」を通らなければならないため、「情報がなかなか日本に出てこられない」と言われる。実際に、データ通信に数十秒かかる事例もある。アリアカのサービスでは、中国も含め専用線のネットワークを作っているため、高速通信が可能だ。
 ─コスト面についてはどうか。
 従来から、一つの企業で独自の専用線を引くケースはあったが、それよりも確実に安くなる。手軽に導入できるのもSD―WANの特徴だ。SDはソフトウェア・ディファインドの略で、「ソフトでWANにつなげましょう」という意味。そのため、導入にあたっての特別な設備投資は一切不要だ。SD―WANサービスを、専用線で提供しているのは、このサービスだけだ。帯域幅の増加や拠点の拡充といった、サービス拡張のための投資は、アリアカがすべて行うため、各企業が特別な負担をする必要もない。
 ─国内で導入している企業は何社あるか。
 17年から扱い始めたサービスだが、製造業を中心に、すでに20社近くが導入している。2020年からは当社としても本格的なマーケティングを開始する。大手企業の動向をみると、自社専用線からSD―WANへの切り替えの兆しが見え始めている。「2020年は、SD―WAN元年になる」というのが、米国のアリアカとの共通認識だ。


■チャットボットの正答率95%以上も

 ─対話型AIプラットフォーム「Passage AI」についても聞きたい。
 いわゆるAIチャットボットサービスで、19年6月に提案を開始した。学習能力が非常に優れており、正答率が高いのが特徴だ。実際に導入した企業の事例では、正答率が95%以上になったという事例も報告されている。採用企業が世界規模で増えており、例えば自動車業界では、大手企業が軒並みこのサービスを導入している。対応できる言語の数も100を超えており、もちろん日本語にも対応している。
 ─正答率以外の部分で、他のチャットボットとの差別化のポイントは。
 導入に当たっての初期負担が比較的少ないのも特徴だ。導入前に、多額の初期開発費用をかけて、徹底的に学習させる必要があるというAIチャットボットも少なくないが、当社の提案するチャットボットでは、そうした点にあまり重きを置いていない。導入企業が、自社で継続的に開発を進められるツールを提供している。導入企業が、チャットボットのサービスを提供しつつ、自らAIを育てていくイメージだ。そのため、初期導入費用を低く抑えることが可能だ。
 メッセンジャーアプリと簡単につなげられる点も特徴だ。スマートスピーカーをインターフェースにすることもできる。ECサイトのトップページにチャットボットの入り口を作るといった活用ももちろん可能だ。
 在庫管理などのクラウドサービスとの連携も簡単に行える。決済システムとの接続も可能だ。これらを駆使すれば、例えば、スマートスピーカーからの問い合わせに対して、在庫確認を行い、「これはいかが」と提案を実施、契約が決まれば、クレジットカードで決済を行う、といったことも可能になる。
 ─国内の導入状況は。
 提案開始からまだ半年だが、すでに100社が導入の検討を開始している。テスト導入を行っている企業も数社ある。通販やECとも非常に相性の良いサービスだと考えている。
 カスタマーセンターの代わりのような「社外向け」の使い方ももちろんあるが、「社内向け」のニーズもあるとみている。どこの会社でも「パスワードを忘れた」「ネットがつながらない」といった社員の問い合わせは、間接部門に少なからず寄せられている。チャットボットでそうした雑多な問い合わせに迅速・的確に対応ができれば、間接人員の削減や、従業員満足度の向上にもつながると期待できる。実際に導入の検討をしていただいている企業の半数は、「社内向け」の用途を想定しているということだ。
 ─最後に、2020年を迎え、久保社長の決意を聞きたい。
 アカマイのCDNサービスの提案も引き続き強化したい。大きなスポーツイベントがある年というのは、必ずネット上で、猛烈なアタックが来る。世界最大のスポーツイベントであるオリンピックが開かれる2020年は、ランキングに載るような著名企業には、確実に攻撃が来ると思っておいた方がよい。自社が攻撃の被害にあってから、アカマイのサービスの必要性を痛感するという企業も少なくない。今、セキュリティーにしっかり取り組むことによって、オリンピックという「最大の売りチャンス」をしっかりと捉えていただきたいと考えている。
 ※1 CDNとは…世界中に多数のサーバーを展開することにより、専用の配信ネットワークを構築、エンドユーザーに近い拠点からウェブを配信する仕組み。ウェブ配信の高速化や、セキュリティー向上に貢献する。
 ※2 WANとは…ワイド・エリア・ネットワークの略称。LANなどに比べて、より広域なネットワークを指す。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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