【ダスキン 山村輝治社長】”生活調律業”を掲げ、顧客との関係性を深化

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 ダスキンは2024年3月期を最終年度とする9カ年の長期戦略「ONE DUSKIN」に基づき、訪販事業のより一層の強化に乗り出している。さらに長期戦略の第2フェーズとして、19年3月期を初年度とする「中期経営方針2018」を策定。ダストコントロールや介護事業など、従来はそれぞれのサービスごとに事業展開してきたが、顧客の利便性向上と事業間の連携強化のため、「訪販グループ」へ組織変更を行った。新たな事業コンセプトとして”生活調律業”を掲げ、「暮らしのリズムを整える」ための商品・サービスを展開していく方針だ。山村輝治社長に新中計における訪販事業の戦略について聞いた。

 ─中計の第1フェーズが終了した。訪販事業の進捗についてどのように分析しているか。

 クリーン・ケアグループだけでみれば、当初予定していた売り上げには届かなかったものの、3年間は増収増益を達成することができた。
 家庭市場は増収にできなかったが、計画当初よりも減収幅は小さくなっている。訪販グループ全体では、家事代行やエアコンクリーニングといった役務サービス、さらにレントオール事業などは順調に成長していて、グループ全体の増収に寄与した。
 女性の社会進出は目覚ましく、働く人だけではなく、さまざまな用事で外出されていることが多い。結果として、在宅のお客さまと対面する機会が減ってきている。時短をキーワードにした家事の負担を減らす商品や役務サービスも増えてきている。
 特に昨年、ロボット掃除機のレンタルを始めたがお客さまからのニーズが高い。

 ─中計では、販売員の「コンシェルジュ化」を目指してきた。

 販売員がタブレット端末を持って商品やサービスを提案することが多くなり、手応えを感じている。タブレット端末を使うことで、提案がしやすくなっている。

 ─3年前に始めた会員サイト「DDuet(ディー・デュエット)」の会員も順調に増えて60万人に達した。

 順調に会員を増やしており、早期に100万人を達成したい。会員を増やしていく理由は明確で、会うことができないお客さまに、メールなどで商品やサービスの情報を直接伝えることができるからだ。
 お客さまからすれば、好きな時にウエブサイトから注文できるし、販売員と会えなくても最新情報を手に入れることができるため、お客さまに会員登録を促している。
 DDuetを始めたことで、お客さまに情報を伝える手段が増えた。会員にもっとメリットを感じてもらえるようなコンテンツを作っていく必要がある。
 現在、ダスキンをご利用いただいているご家庭は約500万軒あるが、利用者でなくても会員制度に登録することはできる。今は利用がなくても、定期的に情報を届けることで、将来的な顧客化につながると考えている。


”生活調律業”を事業コンセプトに

 ─19年3月期を初年度とする新たな中計を策定した。

 これまでは、ダストコントロールや役務サービスとそれ以外の訪問販売事業はそれぞれ個別に運営してきた。4月1日から、フード事業と法人営業以外は「訪販グループ」として一つのグループにした。その中に「戦略本部」を新設し、訪販グループの各事業を最大・最適化するのが大きな目的だ。
 家庭市場は、ダストコントロール商品以外にも、役務サービス、化粧品、健康食品の販売など幅広い。とはいえ、各事業の販売員はそれぞれの商品・サービスの営業に注力するので、他事業のサービスを提案することは少ない。ダスキンが手掛ける商品・サービスをトータルでお客さまに提案することが大きな目的だ。
 今回の中計で、何か新しいものを生み出そうというよりは、前中計で取り組んできたことを事業横断的に提案できるようにしたい。

 ─事業グループの名称にあえて「訪販」を入れた理由は。

 お客さまがダスキン(の販売員)と関わってから、人生のさまざまなシーンでお付き合いしてもらいたいと考えたからだ。お客さまが今は若くても、高齢になれば介護に関わるサービスが必要となるかもしれない。その時に、お客さまと直接お会いして寄り添いながらご要望をお聞きすることができる訪問販売の強みを最大限に活かし、本当に必要な商品・サービスを提案したい。「生活調律」というコンセプトはここからきている。
 ─受注を主体としたコールセンターをコンタクトセンターに変える。狙いは何か。
 お客さまから注文を受けるだけではなく、これまで当社のサービスを利用してくださったり、商品の購入歴のあるお客さまに提案営業していく。
 実際に加盟店では、過去にサービスの利用や購入歴のあるお客さまに電話をかけたり、ダイレクトメール(DM)を送付するなどして掘り起こしに努めている。そのサポート業務を本部のコンタクトセンターが担うようにすることで、お客さまとの継続的な関係を増やしていきたい。


ダスキン人材紹介サイトを開始

 ─訪販業界では、販売員の確保が大きな課題となっている。

 仕事の内容をできるだけ簡素化していかないと、いっそう採用が難しくなる。販売員が使う機器を軽量化したり、同じ作業時間でより効率よく掃除ができる薬剤の開発なども必要だ。
 ダスキンの各事業で、どんな求人があるのかを横断的に紹介するサイトを開設した。採用について今後は、本部がもっと関わるようになるだろう。

 ─フランチャイズ本部と加盟店の関係性も変わってくる。

 これまで加盟店に任せていたことを本部が積極的に支援する必要があるということだ。
 商品やサービスの開発は本部の大きな役割だが、今後はお客さまに一番近い加盟店の意見を一層積極的に取り入れていく必要がある。本部と加盟店の役割の垣根を取り払い、お互いにダスキンブランドの最適化を図っていく必要がある。加盟店やお客さまが持つ意見や要望を本部がきちんと吸い上げる能力が問われることになる。

 ─昨年から全加盟店を対象に「ONE DUSKIN DAY」を実施している。

 本部の社員が現場に出向いて一緒にお客さまを訪問し、商品を提案するという取り組みだ。普段はお客さまと対面する機会のない、業務スタッフも参加する。お客さまと実際に会うことで、商品開発を含めたさまざまな場面に生かしていきたい。

 ─シニア向けの事業展開について。

 2000年から手掛けている公的介護保険外サービス提供事業を4月から「ダスキン ライフケア」と事業名称を変更した。スタッフの半数以上が60代より上の世代。シニアといっても元気な人が多く、介護分野だけではなく、趣味のお相手や家事のお手伝いといったサービスもあることを知っていただくことが必要だ。高齢者と離れて暮らす家族にも、サービスの認知度を高めていきたい。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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