新エネルギー・産業技術総合開発機構/自動走行ロボを技術開発/楽天など大手企業が実証実験に参加

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 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、所在地神奈川県、石塚博昭理事長)は9月2日、ラストワンマイル物流の実現に向けた自動走行ロボットの技術開発に着手する。実証実験は11月以降順次行い、官民協議会を通して法整備を進めていくという。
 NEDOが取り組むのは「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」。実証実験は10項目あたり、場所や内容、そして実施する企業がそれぞれ異なる。「実験ごとに、進捗状況が異なるため、事案ごとに法整備が進む可能性もある」(NEDOロボット・AI部)と言う。また、「焦点は、実証実験のデータと、実証実験に参加している企業が取り組みたいビジネスモデルの二つ。これらが法整備と照らし合わせてどう進むかが課題」(同)と話している。さらに、公道を使用する場合は、国土交通省や警視庁と協力し、道路使用許可などが必要になる。中には、私道や私有地で行う企業もあるため、取り組む事案によって、申請の有無や実証回数が異なってしまうこともある。
 今回の実証実験に参加する企業は、NTTドコモやソフトバンク、佐川急便、楽天など業界が異なる大手企業12社。それぞれ全国10カ所で実証実験を行う。


■法整備は現行法が妥当

 NEDOによれば、「自動走行ロボットという名称自体が法律にはない。自動配送ロボットとして進めると新たな法整備が必要で、時間がかかる」(同)と言い、「自動配送ロボットと類似している名称と内容で進めるのであれば、『電動車いす』を自動走行ロボットの内容に近づける方法がスムーズなのかもしれない」(同)と話している。
 法整備には、官民協議会を通じた議論で進められる。NEDOは、今回参画する企業と協議会に意見を出したり、企業側の意見をまとめる立場にある。官民協議会は、コロナの影響や首相交代など受けて、進行が遅れているのが現状だ。しかし、自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた取り組みは、退任を表明した安倍内閣が進めてきた事案のため、次期首相のもと、政府の状況が落ち着き次第動くものと予想している。


【記者の目】 ビジネスと法律の折り合いが焦点

 官民が整備を急ぐ、自動走行ロボットを活用した配送は、欧米やアジア圏では実用化に向けた実験が進んでおり、日本は遅れを取っているのが現状だ。しかし、新型コロナという未曽有のウイルスが、自動走行ロボットの進みを加速させる要素となっているのは間違いない。NEDOの担当者によれば、進みは、ケーススタディーのデータ収集と、企業側が考えるビジネスモデルの双方が法律に合致していくかが、焦点になると話していた。政府は、自動走行ロボットの活用データは持っていないため、企業が主導で進めていく利点はある。しかし、企業は収益が見込めなければ意味がないため、そこが軸となったデータ収集だけでは、法改正につなげることは難しいところもあるようだ。ビジネスと法律の折り合いがどこになるかが焦点になる。しかし、その着地点が実用性に乏しいものであれば、自動走行ロボットの意味がなくなる。実証実験は11月以降順次始まる。各社の動向とNEDOの動き、そして官民協議会に注視したい。公道を自動走行ロボットが走るのは現実となりつつある。近未来に近づく光景がもう少しで見れる興奮もある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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