【真価問われる日本版D2C】 本場・米国からも進出/「オールバーズ」は実店舗とECで本格展開

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蓑輪光浩マーケティングディレクター(写真左)と石井孝憲ECシニアマネージャー

蓑輪光浩マーケティングディレクター(写真左)と石井孝憲ECシニアマネージャー

 メーカーが消費者に直販するビジネスモデル「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」の台頭が顕著だ。国内でもスタートアップから大手企業まで新たなD2Cブランドを立ち上げている。ただ、「メーカー直販=D2C」という認識は少し違う。「D2C」は、ブランドと顧客が直接つながることで付加価値を発揮し、それにより消費者や社会の課題解決につながる点に魅力がある。今年1月、D2Cの本場である米国からシューズブランド「Allbirds(オールバーズ)」が日本に進出した。実店舗で販売を開始し、4月1日にはECサイトを開設。本場からの参入が進むことで、国内のD2Cブランドは真価を問われる時代に突入する。

 米国サンフランシスコ発のシューズブランド「オールバーズ」を日本で展開するオールバーズ合同会社は4月1日、日本向けのECサイトを開設した。1月に開設した東京・原宿の実店舗に加え、ECのチャネルを持つことで、ユーザーの利便性を高める。
 「オールバーズ」は、米国のニュース誌が「世界一快適な靴」と評したグローバルでも注目のD2Cブランド。ウールやサトウキビなど自然由来の素材を活用し、シンプルで履きやすいシューズを製造・販売している。サステナブル(持続可能性)を意識したコンセプトに共感し、著名な俳優であり環境活動家でもあるレオナルド・ディカプリオ氏も投資している。
 今年1月に日本に進出すると、米国での人気を知る顧客が実店舗に押し寄せ、入店待ちの列が絶えなかった。これまでニューヨーク店が世界一の売り上げを上げていたが、原宿店がその売り上げを抜き、トップの実績を上げているという。
 4月1日に開設したECサイトでは、人気モデル「Wool Runners(ウールランナー)」や、ユーカリの木の繊維を使用したメッシュ構造の「Tree Runners(ツリーランナー)」など、全14シリーズをラインアップする。送料無料で商品を配送し、出荷から30日間は返品・交換にも無料で対応する。ライブチャットでの問い合わせ対応も行う。


■D2Cの強みを発揮

 「オールバーズ」はサステナブルなコンセプトや、普遍性のあるデザインなどが人気だが、D2Cの強みをいかんなく発揮することで、顧客との関係性を構築できている。
 「考え方はIT企業に近く、例えば人気モデル『ウールランナー』は、発売から3年ほどたつが、これまでに30回ぐらいアップデートしている。もちろん開発段階で改良を重ねて発売しているが、発売後もお客さまの意見を吸い上げ、反映させることを重視している」(蓑輪光浩マーケティングディレクター)と話す。
 一般的な卸販売の場合、短期間に商品を改良すると、小売店から最新のバージョンを求められるため、旧型の在庫が余ったり、営業面でも支障を来す可能性がある。D2Cは基本的に自社のチャネルのみで販売するため、在庫を自分たちでコントロールできる。流通に中間マージンがないので、改良コストも吸収可能だという。
 実店舗で電子レシートを発行し、顧客のメールアドレスを取得。購入者にメールでNPS(ネットプロモータースコア)のアンケートを依頼し、製品に対する感想を集めている。
 他にも店舗接客やコールセンター、SNSなどで世界中から集めたフィードバックをもとに、経営陣を含めて定期的に会議を開き、課題を洗い出している。


■IT業界で認知拡大

 サステナブルに加えて、ウェブサービスのように顧客の声から改善を続ける商品コンセプトもIT企業で働く人の支持を集めた。

(続きは、「日本流通産業新聞」4月2日号で)

「オールバーズ」のECサイト

「オールバーズ」のECサイト

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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