【訪販協・救済基金】 ジャパンライフ被害者に交付へ/業界内外から適正な制度運用求める声

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 (公社)日本訪問販売協会(訪販協、横手喜一会長)が保有する「訪問販売消費者救済基金(※注参照、以下救済基金)」が、ジャパンライフの被害者に交付されることになりそうだ。訪販協ではこれまでも、救済基金の申請受け付けを行っていたが、10月18日には、ジャパンライフとの契約に関する申請について、「20年1月20日まで」という期限を設けた。これを受けて、対象者の選定や、交付額の算定といった、救済基金の交付に向けた動きが一気に加速しそうだ。ジャパンライフの被害者弁護団からは、「救済基金の交付に期待する」という声が聞かれる一方で、「基金交付制度の運用に時間がかかりすぎ」と指摘する声も上がっている。一方で、訪販協の会員企業からは、「訪販協からの脱退も検討する」といった声も聞かれるようになっている。


■申請者は数百人にも

 訪販協は10月18日、ジャパンライフとの契約に係る救済基金の申請期限と、申請に当たっての留意点を公開した。
 救済基金の申請については、申請する契約ごとに、(1)申請書(2)経緯説明書(3)契約書等の書面(4)申請事案関連のパンフレットやカタログ─などの提出を求めている。経緯説明書では、被害者に対して、勧誘された時期、勧誘者、勧誘された場所、勧誘の内容などを細かく記載するように示している。
 訪販協は救済基金について、同協会のウェブサイトで新たな告知を行った。国民生活センターとも連携し、全国の消費生活センターに対して、救済基金に関する情報共有を行っているという。ジャパンライフの被害者から消費生活センターに相談が寄せられた際には、相談員が、基金についての情報を知らせているのだとしている。
 ジャパンライフの契約に関する、救済基金の交付の可否については、申請期限の1月20日以降に、第三者委員会「消費者救済に係る審査委員会」を開催し、1件ごとに判断するとしている。「そもそもジャパンライフの件について救済基金を交付するかどうかも現時点では未定」(訪販協・大森俊一専務理事)としている。
 ジャパンライフの被害弁護団によると、全国で数百人の被害者が、すでに申請済みか申請中なのだという。全国のジャパンライフ被害者のために全国で編成されている各弁護団は、訪販協に対して再三にわたり、基金の交付を求めてきたという。消費者庁も、訪販協に対して、「適切な対応を繰り返し求めている」(取引対策課)としている。
 訪販協にとってはもはや、包囲網が敷かれている状態であり、ジャパンライフの被害者に対して、救済基金を一切交付しないという判断は、よほどの事情がない限りできそうにない。


■契約が複雑で審査困難か

 救済基金の申請については、個々の契約の内容が複雑であるため、交付するか否かの判断が難しいという意見も、訪販協や審査委員会の委員からは聞こえてくる。
 ジャパンライフに対しては、16年12月から17年12月までに計4回にわたり、行政処分が行われている。根拠とする法令は、預託法、特商法(訪販類型)、同(連鎖販売取引類型)、同(業務提供誘引販売取引類型)と、さまざまだ。

(続きは、「日本流通産業新聞」11月28日号で)

 訪問販売消費者救済基金とは…特定商取引法に基づいて訪販協が2010年に設けた基金。訪販協に加盟する事業者が、訪問販売の契約を解除してすでに支払った商品代金などの返還を求める消費者に対して、正当な理由なく返金しない場合に、訪販協が消費者に一定の金銭を交付するというもの。
 救済基金の交付には(1)09年12月1日以降に締結された契約である(2)特商法で定義する「訪問販売」の契約である(3)09年12月1日時点で訪販協の正会員であった事業者との取引である(4)特商法の規定により契約を解除したが返金されない(5)事業者が返金しないことに正当な理由がない(6)取消の意思表示と返金の請求をしてから1年が経過していない─の6つの要件がある。19年11月時点で、訪販協が保有する基金の総額は約1億1000万円だとしている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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