ウィル 〈24カ月の業務停止命令〉/消費者庁「持続可能性のないビジネス」

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笹路健取引対策課長(写真右)と小林渉審議官

 消費者庁は7月19日、カード型USBメモリの販売・レンタル事業を展開していたウィル(本社東京都、中井良昇社長)に対して、ウィルが行っていた訪問販売における不実告知を認定、特定商取引法に基づき、24カ月の業務停止命令を行った。ウィルの統率の下、ウィルと同様の訪問販売を行っていた7社に対しても、それぞれ18カ月の業務停止命令を行った。消費者庁は、ウィルが行っていた事業について、「持続可能性のないビジネスモデルだ」と強調した。消費者庁は、ウィルが今後、別の法人名義で同様の勧誘行為を行う可能性があることを示唆している。さらなる消費者被害の発生を考慮し、文書による注意喚起も併せて行った。

■自転車操業状態のウィル

 消費者庁によると、ウィルは19年1月から、カラオケやゲームなどの複数のアプリが読み込まれたカード型USBメモリを販売。販売したカードを顧客からウィルがレンタルし、海外のホテルなどに貸し出すことによって得た賃借料をカードの購入者に支払うという役務について、購入者と契約していた。カード型USBメモリは約60万円。賃借料は、3年間で36回にわたり計72万円を支払うという契約だったという。複数のUSBの契約をしていた消費者もいたとしている。
 消費者庁によると、18年10月から19年5月の8カ月間のウィルの売り上げ約184億円のうち、99%にあたる約182億円が、カード型USBメモリの販売による売り上げだったという。カードを貸し出すことによって得られる賃借料の売上高は、全体の1%程度だったという。
 消費者庁によると、19年7月22日時点で、賃借料の支払いは継続的に行われていた。ただ、新たなカードの販売による売り上げを購入者への支払いに充てており、自転車操業状態である可能性が高いことが分かったという。消費者庁は将来的に大規模な消費者被害が発生する可能性が高いことから、最長の24カ月の業務停止命令を行ったとしている。
 消費者庁が24カ月の業務停止を命じるのは初めて。特商法で可能な最長の業務停止期間となる。


■業務禁止命令は別で行うか

 消費者庁は18年12月にも、ウィルが行っていたカード型USBメモリの連鎖販売取引について、15カ月間の業務停止命令を行っていた。
 ウィルは昨年の業務停止命令を受け、19年1月から、連鎖販売取引ではなく、同社の事務所などに消費者を誘引し、商品に関するセミナーを行った後に、個別に商品の購入を勧める訪問販売の形態で事業を継続していたとしている。3月には、ウィルの取締役らに新たに五つの法人を設立させた。新会社はウィルの統率の下、訪販の形態でカードの販売を行っていたという。
 消費者庁は、今回のウィルと傘下の7社に対する業務停止命令に伴う業務禁止命令を7月24日時点で一切行っていない。業務禁止命令を行わない理由について、消費者庁は、「消費者被害の未然防止に向けて最善の選択をした」(笹路健取引対策課長)としている。「1カ月後に何があるか分かるのではないか」(小林渉審議官)とも話しており、ウィルに関して消費者庁が時間差で何らかの措置を行う可能性がある。
 さくら共同法律事務所の千原曜弁護士は、今回消費者庁が業務禁止命令を行わなかった理由について、「あくまで推測だが、現時点で業務禁止命令の対象者を調査しきれていないのではないか。調査を継続し、後日、業務禁止命令を発令するのではないか」と話している。


■異例の注意喚起も

 消費者庁は7月22日、ウィルの関連会社である、ワールドイノベーションラブオール(本社東京都)が行う可能性があるカード型USBメモリの訪問販売について、消費者安全法に基づく注意喚起を行った。
 消費者庁によると、ウィルは関係者に対して、ウィルの社名をワールドイノベーションラブオールに変更する旨を説明しているという。これまでウィル名義で行われていた広告の名義が、ワールドイノベーションラブオール名義で行われるようにもなっているという。
 消費者庁は、ウィルに対する業務停止命令を行った後も、ワールドイノベーションラブオールがウィルの事業を継続し、将来的に重大な消費者被害を発生させるおそれがあることを懸念している。消費者庁は、ウィルの取引行為が、消費者安全法が定める消費者の利益を不当に害するおそれのある行為として認定し、注意喚起を行った。
 消費者庁が特定商取引法の違反行為について、消費者安全法上の注意喚起を行うのは初めてだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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