【〈ヤフーVSアスクル〉経営主導権争い勃発】 ヤフー、社長退陣を要求/アスクル、提携解消を申し入れ

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 ヤフーは7月17日、連結子会社であるアスクルの定時株主総会において、岩田彰一郎社長の再任に反対の議決権を行使すると発表した。ヤフーはアスクルが経営再建するために経営陣の若返りを求めている。アスクルはヤフーの要求に対して徹底抗戦の構え。同日、ヤフーに対して資本業務提携の解消に向けた協議を申し入れたと発表した。両社の対立は、ヤフーが日用品ECサイト「LOHACO(ロハコ)」の運営事業をアスクルから譲り受けたいと打診し、アスクルがこの要請を断ったことに端を発している。両社の意見は平行線をたどっており、8月2日の株主総会まで経営の主導権争いが過熱しそうだ。

 ヤフーとアスクルは12年4月、業務・資本提携を締結した。同年10月には共同事業として日用品ECサイト「ロハコ」を開設している。ヤフーは現在、アスクルの約45%の株式を保有している筆頭株主だ。
 ヤフーはアスクルの岩田社長の再任に反対する理由として、(1)アスクルの低迷する業績の早期回復(2)経営体制の若返り(3)アスクルの中長期的な企業価値向上(4)株主共同利益の最大化─を挙げている。アスクルのBtoC事業(ロハコ事業)の赤字幅が拡大していることなどを指摘し(図参照)、現体制での経営再建を疑問視している。
 アスクルは定時株主総会において、岩田社長を含む取締役10人の選任議案を通知しており、ヤフーの意向とは衝突する。ロハコ事業の低迷については決算説明会にて、物流センターの火災や宅配運賃の値上げの影響が尾を引いたためだと説明した。
 ただ、倉庫の効率化や自社物流の有効活用、独自商品の取り扱い強化によって、「物流センター火災や宅配クライシスの危機は克服した」(岩田社長)と表明。20年5月期は大幅増益が期待できると強調している。


■「ロハコ」が火種

 ヤフーは19年1月、アスクルに対してロハコ事業の譲渡を要請したという。アスクルはその要請を断ったことから、ヤフーは岩田社長の退陣を要求するに至ったようだ。ロハコ事業はヤフーにとってもショッピング事業を伸ばす鍵であり、アスクルにとっては今後の成長を担う存在だ。
 アスクルはヤフーによる一方的な岩田社長の退陣要求を受け、業務・資本提携の解消を申し入れている。提携時に取り交わした「イコールパートナーシップ(対等で友好的なパートナーシップ)の精神」や、ロハコ事業の独立性を最大限尊重するといった項目に反すると訴えている。
 両社の対立は簡単に収まりそうもない。7月18日、アスクルは記者会見を開き、自社の正当性をさらに訴えるものとみられる。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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