【好調企業の戦略】 〈高島屋 食品宅配「ローズキッチン」〉/外商顧客に希少性高い商品を提案

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業績が好調な食品宅配サービス「ローズキッチン」

業績が好調な食品宅配サービス「ローズキッチン」

 高島屋が首都圏を中心に展開する食品宅配サービス「ローズキッチン」の業績が好調だ。百貨店の外商を通じた、対面による顧客獲得が奏功し、19年2月期における売上高は前の期と比べて2.2倍増の24億円と大幅な増収を達成した。20年3月期は同12.5%増の27億円を見込んでいる。
 好調要因は、外商顧客を着実に獲得できていることと、顧客の特性に応じた商品開発ができたこと。
 ローズキッチンでは、外商顧客だけが購入できる商品をバイヤーが毎月企画し、年間10企画以上を用意する。外商営業を通じて注文できるようにし、付加価値を高めた。希少性の高い酒やワイン、つまみなどの食品を掲載したチラシを作り、外商が説明販売を行う。顧客の健康志向が高いことから、OEMで酵素のサプリメントを外商顧客用に開発した。
 一般会員顧客に対しては、廉価な商品をまとめ買いすることで安く購入することができる「ご自宅用お買い得品特別販売」を訴求する。
 顧客単価は外商顧客が1カ月あたり1万4000円。1カ月当たりの購入頻度は平均1.56回で、一般会員の購入頻度1.2回を大きく上回る。売り上げの4割を外商顧客で占めている。
 新規顧客獲得は、店頭に置くカタログからの流入のほか、通販やカードホルダーへのDMによるアプローチが基本だ。
 百貨店の店頭の複数カ所に商品カタログを配置する。玄関のコンシェルジュカウンターだけでなく、総菜や生鮮、お菓子の売り場、ギフトセンターにもカタログを置くようにし、顧客との接点を広げた。前期は期間限定でカタログの表紙に番号を記載し、どの店舗のカタログから注文があったかが分かる仕組みを導入。店舗ごとの配布部数が測定できるようにして、店舗ごとに部数を調整することで販促の効率化につなげる。日本橋店・横浜店で新規顧客全体の6割を占める。
 中元・歳暮シーズンに来店し、購入した顧客に対するDMを実施した。百貨店のギフト売り場の1割は、自家使用の商品を販売していることから、この顧客にターゲットを絞り込みDMでアプローチすることで会員化につなげた。18年11~12月だけで前年同時期と比べ3倍の新規会員の登録があったという。
 2~3カ月に一度、外商顧客を店舗の外商サロンに招く「ウエルカムデイズ」で試食会を開いて関係を強めている。
 こうした施策により、登録会員数は約6万5000人となり、毎月購入する実働顧客は3~4万人になった。顧客の75%が60~80歳。そのため、受注は電話が8割以上を占め、ネットによる受注は18%に留まる。コールセンターは外注で数十席を確保する。
 コールセンターのスタッフには、月一回、話法など、接客研修を行うほか、新商品は実際に試食してもらうことで、対応力を高めている。
 外商顧客の日々の注文実績を営業マンが確認できる仕組みを導入。高単価の限定商品が未購入だった場合などに、販促をかけることが可能になり、アップセルにもつながっているという。 
 20年2月期は、ウェブ比率を高めることを目的に5月から「ウェブ先行受注」を初めて実施。一部電話受注だった顧客がネットに移行するケースが見られるという。7月までのキャンペーン施策として展開し、状況を見て継続するかどうかを判断する。今秋をめどに、ウェブサイトの刷新を目指す。
 20年2月期の売上高は前期比12.5%増の27億円を計画する。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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