【ふるさと納税】 6月から新基準/返礼品見直しで除外商品続出か

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 各自治体が、ふるさと納税の返礼品の見直しを進めている。見直しの結果、返礼品の採用から外れる商品が続出しそうだ。6月1日から施行されるふるさと納税の新制度では、返礼品について、「各地方団体の区域内で生産されたもの」など八つの基準を設けている。総務省が、泉佐野市など4自治体を見せしめ的に同制度の対象外とすることを発表した影響などから、各自治体は、より厳格に基準を適用する方向にシフトしているようだ。コメや海産物などを扱う多くの地方の通販・EC企業が、各自治体に返礼品として商品を提供しているが、事業者からは、「返礼品から除外されれば、大きな販路が一つ減ることになり、業績にも影響する」(食品EC企業)といった声も上がっている。


■泉佐野市は反発

 19年3月に成立した地方税法等の一部を改正する法律では、一定の基準に適合した地方自治体を、総務大臣がふるさと納税制度の対象として指定する仕組みを導入した。4月1日に総務省が公布した告示では、同法に基づき、「ふるさと納税制度の趣旨」や「寄付の募集の基準」「返礼品の調達に関する基準」などについて、明確に示している。新基準は6月1日から適用される。
 4月1日の告示では、「返礼品等を強調した寄付者を誘引するための宣伝広告を行わないこと」も新たに基準として盛り込んでいる。
 返礼品については、「当該地方団体の区域内において生産されたものであること」「当該地方団体の区域内において返礼品等の原材料の主要な部分が生産されたものであること」など、10を設けている(別表参照)。
 これらの基準を満たさずにふるさと納税の寄付の募集を行った自治体については、総務省がふるさと納税制度の指定自治体から除外する可能性もある。
 すでに、大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の四つの自治体について、6月1日以降、ふるさと納税の対象自治体から除外すると、総務省は発表した。除外の理由について総務省では、「今回ふるさと納税制度の除外となった地方自治体は、法改正で示した基準を満たしていなかった。「告示で示した『ふるさと納税制度の趣旨に反して、他の地方団体に多大な影響を及ぼすような寄付金の募集を行い、他の地方自治体に比して著しく多額の寄付金を受領した地方団体でない』にも該当しなかった」(自治税務局市町村税課)と話している。
 17年度に全国で最も多い135億円以上の寄付金を集めた泉佐野市は、総務省が決定した四つの自治体が制度から除外されたことについて、「総務省の恣意的な判断があったのではないか」(千代松大耕市長)として反発している。
 同市は20日、総務省に対して、同市が制度の対象から除外された理由や根拠を聞く質問書を提出。24日までに総務省に回答するように求めている。
 泉佐野市は、「当市が制度から除外されたことで、返礼品として商品を供給していた事業者が事業の撤退などを迫られる可能性がある。新制度施行前の5月31日まで引き続き寄付金を募集し、6月1日以降は、市内の事業者の救済や、雇用の維持を、積極的に行っていく」(政策推進課木ノ元誠主幹)と話している。同市は現在、返礼品と最大30%の金額のアマゾンギフト券をセットにして寄付金を集める「300億円キャンペーン」を、同市のふるさと納税専用サイトで行っている。
 泉佐野市に商品を提供していた、ビールのEC事業を展開するヤッホーブルーイング(本社長野県)も、「泉佐野市のふるさと納税経由の売り上げは大きく、事業に影響する」と話している。制度から除外された自治体に商品を供給していた事業者には、多大な影響が出そうだ。

(続きは、「日本流通産業新聞」5月23日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ