楽天はこのほど、「楽天市場」において19年に注力する施策を明らかにした。19年中に送料無料ラインを全店で統一する取り組みはすでに紹介しているが、他にもライブコマース機能や自動価格計算機能を実装する予定だ。チャット機能では、問い合わせたユーザーのデータを確認できる機能を付けたり、画像を送付できる機能を実装したりする。品質向上(違反点数)制度の罰金規定も変更する予定だ。楽天の強みである店舗の多様性をさらに高め、弱みである統一性のなさを補完する取り組みを推進することで、次の成長ステージに進みたい考えだ。
楽天が1月30日に開催した出店者向けイベント「新春カンファレンス」において、一番のサプライズは「送料無料ラインの全店統一」だった。この取り組みは三木谷浩史社長の講演時に発表したが、その後開催した戦略共有会でさまざまな新施策を紹介していた。
戦略共有会は「取材不可」だったが後日、楽天の執行役員コマースカンパニーCCO&ディレクター・野原彰人氏に新施策の内容や狙いについて聞いた。
■ユーザーIDをひも付け
新施策は強みである店舗の多様性を高める取り組みと、弱みである店舗の統一性のなさを補完する取り組みに分けることができる。
多様性を高める取り組みの一つがチャット機能だ。チャット機能は「R—Chat(アール・チャット)」の名称で昨年9月に提供を開始した。今回、名称を「R—Messe(アール・メッセ)」と変更するとともに、新たな機能を紹介した。
今年2月中には、「ユーザーIDとのひも付け」を開始し、チャットの相手がどんなユーザーなのか分かるようにする。属性や購買履歴を確かめることで、接客品質を向上できるという。
さらに今年3月中にはチャット上で画像を送付できる機能も追加する予定だ。お薦め商品の画像を送付したり、問い合わせた商品の利用シーンを画像とともに紹介したりすることが可能になる。
「チャットというとすぐに返信しなければいけないイメージがあり、ファーストインプレッションで大きな負荷に感じる店舗も多かった。本来はきちんとコミュニケーションが取れればいいわけで、夜届いたメッセージには翌朝返せばいい。さらに画像を添付できたり、問い合わせてきたユーザーのデータを把握できることで、厚みのあるコミュニケーションが可能になる」(野原執行役員)と話す。
昨年11月にチャットボットの提供も開始しており、今年中にチャットボットの機能強化も進めている。
■ライブ販売は手探り
今年中に提供を予定しているライブコマースプラットフォーム「楽天Live」も、店舗の多様性をさらにユーザーへ伝えやすくする取り組みだ。店舗の個性を生かし、販売を促進できるようにする。
「他のモールですでに取り組まれているサービスだが、われわれとしても手探りながら取り組んでいく。店舗の発意や創意を生かせるプラットフォームを提供したい」(同)と話す。
マーケティング関連では、今年4月に人工知能(AI)を活用した自動価格計算機能も提供する予定だ。楽天が保有するビッグデータを活用し、需要予測や在庫状況に応じて価格の最適化を自動的に計算できる機能のようだ。
「これまで人間の勘でやってきたプライシングをサポートする機能になる。ただ安売りを促す機能ではなく、場合によっては安すぎる価格を調整することで利益を高めることもできる」(同)と話す。
楽天が日用品などの自社EC事業で培った分析機能を出店者も活用できるようにする。マスプロダクトを中心に対応できるようにする予定だ。
(続きは、「日本流通産業新聞」2月14日号で)
【楽天、19年の戦略】 強みを拡大、弱みを補完/ライブコマース、自動価格計算も
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