千趣会 〈業績不振、続く〉/約100億円の損失に修正

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 千趣会の業績不振が続いている。10月26日に発表した今期(18年12月期)業績予想の修正によると、当期純利益は前回発表した2億円の黒字から一転、90億〜103億円の損失予想に下方修正した。通販事業の売り上げ減少による赤字体質からの脱却が図れていないためだ。同日には星野裕幸社長を含めた経営陣の退任、本社ビルの売却、希望退職者の募集(約280人)、子会社の清算など、大幅なリストラ策を打ち出した。しかし、総合通販を中心とした構造転換が図れていない千趣会にとって、一連のリストラ策で業績回復が見込めるのか、不透明感がただよっている。

■リストラを報道
 それは突然の報道だった。10月24日午後3時8分、日経ビジネスオンラインが「スクープ」と銘打って報じたのは、千趣会のリストラ策だった。内容はインパクトがあり、(1)星野社長を含む複数の取締役が退任(2)大阪本社の売却(3)数百人規模の希望退職者の募集─などが報じられた。
 日経ビジネスが配信した報道の真偽を確認するため、千趣会に連絡したが、「何も聞いていない」(広報部)と回答。大阪本社の経営企画部にも連絡したが、担当者がつかまらない。
 同日午後4時50分、千趣会は「本日の一部報道について」と題する文書を発表。「日経ビジネスオンラインにおいて、当社が大規模なリストラを検討している旨の報道がありましたが、当社が発表したものではありません。現段階におきまして、決定している事実はございません」と公表した。しかし、今となってはこの発表文自体、むなしく感じる。

■アマゾン余波?
 千趣会が10月26日に発表した中期経営計画(中計)の見直し内容は別表の通り。千趣会は近年、自社の業績が厳しい理由について、(1)消費の急速なECへのシフト(2)新たなビジネスモデルを構築した企業の参入による競争激化(3)売り上げ規模を重視したことによる通販事業の利益率低下およびオペレーションコストの増加─などを挙げている。
 そして、現状を打開するため、総合通販から専門店化へのシフトを進めているが、複雑化した事業構造が足かせとなり、進捗が遅れていると説明する。
 一般紙やネットでの報道によると、千趣会の業績が悪化しているのは「アマゾンの影響」「ネット通販への対応の遅れ」などと説明しているが、果たして実際にそうなのだろうか。
 千趣会は通販業界においてかなり早い時期からインターネットの研究・対応に取り組んでいた。前期(17年12月期)の通販売上高は1012億7900万円で、このうちネット受注比率は83.5%を占め、金額にして約850億円の規模となっている。
 しかも、日経ビジネスが報じているように「アマゾンエフェクト」が影響しているというのであれば、それは千趣会に限らず他の通販事業者も厳しい業績を迎えているはずだ。
 しかし、実際にはベルーナとファンケルが10月30日、ともに今期(19年3月期)業績予想の上方修正を発表。さらに同日発表されたスクロールの今期中間決算は、前年同期比2桁の増収増益となっているのだ。

(続きは、「日本流通産業新聞」11月1日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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