国土交通省/宅配BOXの規制緩和/認知度や使いやすさに課題

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駅などの公共スペースに設置されている「プドーステーション」は配達事業者により利用方法が異なる

駅などの公共スペースに設置されている「プドーステーション」は配達事業者により利用方法が異なる

 国土交通省は9月下旬をめどに、宅配便の荷物を保管する宅配ボックスの設置規制を緩和する。従来、容積率(敷地面積に対する建物の延べ面積の割合)に算入していた宅配ボックスの容積を計算から除外する。宅配便の再配達削減につなげたい考えだ。規制緩和により、コンビニエンスストアや大学、集合住宅での設置数の増加が期待されるが、宅配ボックス自体の認知度や利便性には依然課題が残る。

■コンビニで設置に期待
 国交省は17年11月、建築基準法による宅配ボックスの設置規制を緩和した。共同住宅の共用廊下に設置した宅配ボックスの面積を、容積率の計算外とするものだ。
 今回の規制緩和では、対象範囲をさらに広げ、共用廊下以外の部分でも、設置部分を容積率の計算から除外する。日本郵便が運営する「はこぽす」など宅配ロッカーも緩和の対象となる。共同住宅以外の建築物についても規制を緩和する。
 ただし、建築物の延べ床面積の100分の1を宅配ボックスが占める面積の上限としている。
 国交省は、規制緩和によりコンビニやオフィス、病院といった場所でも宅配ボックスの設置が進むとみている。
 「流通事業者や宅配ボックスメーカー、不動産事業者に聞き取り調査をすると、共同住宅以外にも一定のニーズがあると分かった。大学の学生寮などの宿舎や病院、コンビニやオフィスが挙げられる。コンビニ事業者からは、現在のコンビニ受け取りは人が介在するため、レジに行列ができるなどして苦労しているという話も聞いている」(住宅局・市街地建築課)と緩和の経緯を説明する。
 国交省は9月下旬までに、建築基準法の政令を一部改正し、施行する方針。8月29日まで受け付けていたパブリックコメントを基に、制度改正の内容を最終調整している。


■設置場所は2年で60倍
 規制緩和を待たずして、オフィスや商業施設における宅配ボックスの設置は進んでいる。ネオポストグループ傘下のPackcity Japan(本社東京都、リュケ・ジャン・ロラン社長)は8月1日、栃木トヨタ自動車の実店舗においてオープン型宅配ロッカー「PUDO(プドー)ステーション」の運用を開始した。
 同社はこれまでも、大学や駅のほか、小売事業者の実店舗を中心に宅配ロッカーの設置を進めている。設置場所は9月4日時点で、3000カ所を超えた。
 パックシティジャパンは今回の規制緩和について「『プドーステーション』がどれくらい容積率に影響するか分からないので、現段階では規制緩和のインパクトは判断できないが、当社にとって追い風であることは確か」(営業部・湯山昭信課長)と話す。
 国交省によると、駅などの公共スペースに設置された宅配ボックスやロッカーの設置場所は、18年2月の時点で2668カ所。ボックス数で7万198口となっている。16年6月時点と比べると、設置場所は約60倍に増加している(表1参照)。
 宅配ボックスの効果についてヤマト運輸は、「設置台数の拡大とともに、利用件数も増加している。宅配便の配達時間内に在宅できない単身のビジネスマンや学生などが多く利用しており、再配達件数の削減にも良い効果を与えている。(規制緩和により設置台数が増えれば)荷物を受け取る際の選択肢が増え、お客さまの利便性がより向上し、結果として再配達の削減につながると見込んでいる」(広報戦略部)と説明する。

(続きは、「日本流通産業新聞」9月6日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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