ヤマトグループ 〈引越で過剰請求判明〉/2640社に合計17億円

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記者会見で質問に答えるヤマトホールディングスの山内雅喜社長(写真左)とヤマトホームコンビニエンスの和田誠社長(東京・霞が関の国土交通省で)

記者会見で質問に答えるヤマトホールディングスの山内雅喜社長(写真左)とヤマトホームコンビニエンスの和田誠社長(東京・霞が関の国土交通省で)

 ヤマトホールディングス(YHD)と、子会社で引っ越し事業などを手掛けるヤマトホームコンビニエンス(YHC、本社東京都、和田誠社長)は7月24日、法人向けの引っ越しサービスで不適切な請求が判明したと発表した。過去2年間の引っ越しサービスを提供した全法人を調査した結果、過剰請求は2640社に対し合計約4万8000件、総額は約17億円に達することが判明した。この件でYHDは7月23日、弁護士など3人の専門家で構成する調査委員会を発足。8月中にも同委員会から調査結果と原因の究明、再発防止策などの報告を受ける予定だ。

■作業分精算せず、当初見積を請求

 記者会見でYHDの山内雅喜社長は、「今回の事態が発生したことを受け、"クロネコブランド"の信頼を揺るがしかねないと認識している。ヤマトホームコンビニエンスという子会社1社の問題ではなく、グループ全体の問題と認識している」と謝罪した。
 過剰請求が発覚したきっかけは報道機関からの問い合わせだった。事態を確認・検証するために7月5〜16日の期間、すべての法人向け引っ越し案件について調査を実施した。
 法人顧客に提出した見積書と請求書の控え、およびシステム上に保管している実際の作業量である作業連絡票のデータを付け合わせ、全法人3367社、約12万4000件について照合するとともに、全国のYHC地域責任者11人および一部の支店長へのヒヤリングを実施した。
 その結果、不適切な請求が2640社、合計約4万8000件が判明し、不適切な請求額の総額は約17億円だった。法人向け引っ越しサービスは通常、当初の見積もりから家財量が増減したり、付帯作業の要否で変化したりすることが多く、実際の作業に即した金額を請求するのが基本ルールとなっている。
 しかし、調査結果では、全体の約4割が基本ルールを逸脱し、見積額をそのまま請求していた。実作業終了後に、差分を精算すべきだったにもかかわらず、精算ができていない案件が約4万8000件で、その差分の総額が約17億円だった。個別案件で最も金額が乖離していたのは、実際の請求額よりも19万円多く請求していたという。


■法人向け引越の契約・受注中止

 不適切請求の判明を受けてYHCは7月23日までに、すべの法人顧客に報告と謝罪を行い、今後不適正請求分は速やかに返金するとしている。7月17日にはYHC社長直轄の「事業構造改革推進室」を設置。基本ルールの周知と再徹底や、法人向け引っ越しサービスの商品構成の抜本的見直し、運用・監視体制の再構築など、抜本的な再発防止策に着手した。
 さらにYHDでは、外部の独立した専門家で構成する調査委員会を7月23日に設置。8月中に同委員会から詳細な調査結果と原因の究明、再発防止策の有効性などについて報告を受ける。同委員会が有効と認めた再発防止策が機能を開始するまでの期間、YHCは法人顧客と契約する引っ越しサービスの新規契約、新規受注を中止する。
 YHCの和田社長は、報告と謝罪に訪れた法人顧客の反応について、「ほとんどのお客さまから『信頼していたのに残念だ』というお叱りを受けている。新規を取るというよりも、いかに信頼を回復するかを全力で進めていきたい」と語った。


■調査結果を得て社内処分を決定

 報道陣からは「不適切ではなく不正では」「個人向け引っ越しでも発生しているのでは」「引っ越し以外の点検は行わないのか」といった厳しい質問が相次いだ。
 特に「組織ぐるみの指示だったのでは」との質問に対し、山内社長が「会社・組織として、そのような指示をしたことはない」と応えたことに対し、これから本格的な調査をするのに、なぜ断言できるのか、法人向けで守られなかった基本ルールが個人向けでは問題ないと、なぜ断言できるのかとの質問が飛んだ。
 山内社長は「断言はできないと思っている。組織的な指示はないと申し上げたが、現段階でのヒヤリングでの推測ということで理解いただきたい」と述べるとともに、個人向け引っ越しサービスについては「お客さまと相対で行い直接、請求金額についても確認できる環境なので、発生する可能性は極めて低い」と回答した。
 経営責任について問われた山内社長は、「明らかに経営として責任があるという認識を持っている」と応えるとともに、「今回、このような事態を引き起こしてしまったことは本当に心が痛むし申し訳ないと思っている。お客さまに対して、世の中に対して、もう一度信頼していただける、信頼を抱き続けていける会社として、間違いなくヤマトグループをその方向に持って行くことを社長として進めていく」と断言した。
 経営責任や社内処分については、調査委員会の結果を受けて、処分の内容を決めるとしている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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