改正割販法/通販各社、期限内対応は困難/”違法状態”に陥る企業が大量発生の懸念も

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 通販業界では、6月の改正割賦販売法の施行と同時に、〝違法状態〟に陥る企業が大量に発生しそうだ。改正法ではセキュリティー強化の観点から、顧客のクレジットカード情報の「非保持・非通過(※以下、非保持)」などが求められているが、「期限内に対応できそうにない」という声が業界内には多く上がっているのだ。対応が6月の施行に間に合わなければ〝違法〟となってしまう。改正法のガイドラインである「実行計画2017」では、通販・ECのような非対面加盟店は18年3月末までに、非保持化を推進することを求めている。ただ、18年2月6日時点では、「システム提供会社らと協議を行っている段階」(インペリアル・エンタープライズ)という企業も多い。法律に疎い中小の通販会社などからは、改正割販法について「全く知らなかった」という声がいまだ聞かれるのが現状だ。大手を中心とした通販企業からも「3月末の対応期限に間に合わせるのは現実的に困難」「6月1日の改正法施行にも間に合わない」といった諦めの声が漏れる。「たとえ期限までに対応が間に合わなくても、対応完了に向けたロードマップを策定し、カード会社や顧客にアピールしていくことが必要」(日本通信販売協会)だと指摘する識者もいる。


■最悪加盟店契約解除も

 改正割販法のガイドラインである「実行計画2017」では、通販企業を含む加盟店の採るべき対応方法として、「クレジット情報の国際的なセキュリティー基準であるPCIDSSへの準拠」、もしくは「カード情報の非保持」が示された。
 非保持化対応をしていない加盟店に対する罰則は、改正法には規定されていない。ただ、カード会社や決済代行会社(PSP)には、加盟店管理義務を負わせているため、〝違法状態〟の加盟店があれば、カード会社から加盟店契約そのものをはく奪される可能性もある。
 大手を含めた複数の通販会社に、非保持化に向けた対応状況について取材したところ、「既に対応済み」という企業は少数派であることが分かった。「対応に向けた準備を進めている段階」とする企業がほとんどだった。ECの分野では「対応済み」としている企業でも、電話で注文を受け付ける「テレフォンオーダー(TO)」や、郵送で注文を受け付ける「メールオーダー(MO)」の部分では、「(期限とされている)3月末までに対応することが現実的に不可能だ」とする企業が多かった。
 改正法について全く知らないという通販事業者も複数あった。


■EC企業も対応に差

 EC企業では、自社ECサイトをどのように構築しているかで、非保持に対応できるかに差が出てきているようだ。ECサイト構築プラットフォーム「FutureShop2(フューチャーショップツー)」では、同プラットフォームを利用する全てのEC事業者が非保持化対応の形になるよう、3月7日にシステム変更を行う予定だとしている。同プラットフォームを利用するEC企業約2300社は問題なく対応できそうだ。
 一方、独自のシステムでECサイトの構築をしている企業は、非保持化の対応も独自に行わなければならない。
 全てのサイト構築・運営サービスが現段階で万全のセキュリティーレベルを有しているわけではない。1月7日には、GMOペパボ(本社東京都)が運営するEC運営サービス「カラーミーショップ」に不正アクセスがあり、同社では「約1万2000件のカード情報を含む、約9万件の個人情報が流出した可能性がある」と発表した。サイト構築サービスから情報が流出する危険性はいまだにあるということを、如実に示す事例といえるだろう。
 (公社)日本通信販売協会(JADMA)の橋本祥永クレジット部会長は、「全てのカートASPが非保持化対応をしているわけではない。全てのEC事業者は、自社のECサイトが非保持化に対応できているのかどうかを確認する必要がある」と話している。
 楽天市場やAmazonなどでは、ECモールがクレジットカードの国際的なセキュリティー基準である「PCIDSS」に準拠しているため、問題ないのだという。


■電話注文の通販企業で遅れ

 改正割販法に沿った非保持化の対応について遅れが目立つのは、MO・TOの企業だ。MO・TOの企業が導入すべきソリューションの方式が示されたのが17年11月末と、つい最近であったことが遅れの要因となった。改正割販法が成立する16年12月以前から対応が必要になるという情報をつかんでいたというある企業も、「セキュリティー対策協議会で正式に認められたソリューションが出そろわなかったことから、導入を進めることができなかった」と話している。


(続きは、「日本流通産業新聞」2月8日号で)

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