訪販化粧品企業/高度化するサロン販売管理/システム導入で業務量5分の1の事例も

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 サロン販売を行う訪販化粧品企業では、店舗や販売員を管理する独自システムの導入・高度化が進んでいる。背景には、販売員の高齢化など、経営上の不安要因を抱える中、販売管理を徹底することによって業務の効率化や、販売員の育成につなげたいという各社の思惑がある。ポーラでは、販売員であるビューティーディレクター(BD)の販売実績を本社が把握できるシステムを導入し、物流の予測や商品開発に生かしている。クラブコスメチックスでは16年8月以降、自社開発の店舗システムの導入を進めており、各店舗の業務量を5分の1程度に減らすことができたという。効率化だけでなく、集客力や販売力の向上にもつながっている。

■顧客離れの解消が目的

 各社の管理システムに共通するのは、「店舗ごとのエステの予約状況」「販売員の販売実績」「顧客の傾向分析結果」を本社が把握し、商品開発や販売組織への営業に役立てているという点だ。
 クラブコスメチックスの訪販化粧品ブランド「サロンドフルベール」では、高齢の販売員の引退に伴い、各販売員が抱えていた顧客も離れていってしまうといった現象が少なからず見られ課題に感じていたという。それぞれの販売員と顧客は人間関係で結びついているため、引退する販売員の顧客を、他の販売員が引き継ぐのは難しい状況だったという。
 こういった課題を解消すべく、顧客情報を管理する店舗管理システムの構築に至ったという。システム導入後は、本社が顧客情報を管理できるようになったため、販売員の引退で別の販売員が顧客を引き継ぐ際も、どの販売員が引き継ぐべきかを、本社と販売組織の間で、データに基づき検討することが可能になったとしている。
 これまでクラブコスメチックスでは、本社の営業担当が販売代理店のサロンを訪問し、売り上げ状況の把握や経営の指導などを行ってきた。「1人の担当者がいくつものサロンの状況を把握するのには限界があり、売り上げを上げるためには本社が効率的に状況を把握する必要があった」(中山ユカリ社長)とシステム導入について話している。
 ポーラでは、各営業所の販売実績などを管理する訪販基幹システムを、70年代から保有していた。ただ、当時のポーラは10万人以上の販売員を抱えており、かつ販売員の入れ替わりも多かった。各営業所から集積された膨大なデータを管理することもままならず、課題となっていたという。また、度重なるシステムのアップデートにより、システムの複雑化が進んでしまっていたことも、各営業所にとっては負担となっていた。
 ポーラでは2000年に、新たなシステムを導入。各営業所にはPCを貸与し、在庫や売り上げ、販売員の実績、顧客情報を打ち込んでもらうようにした。本社には一日数回データを通信回線で送っていたという。2008年には、営業所の利便性とセキュリティーを強化した、現在の一元管理システムに刷新した。現在でもシステムのバージョンアップは随時行っているという。

■各社が情報を一元管理

 ポーラで導入している一元管理システム「slim(スリム)」では、月次や年次のビューティーディレクター(BD)の販売実績の推移や、顧客の傾向を、本社で集約・分析できるという。個々のBDが毎日、仕事の終了後に営業所のPC端末から情報を打ち込む。
 ポーラ本社で集約・分析した情報は、再度各営業所や店舗にフィードバックしている。例えば、売り上げ実績の高いBDの成功例の分析も行っている。「どのようなタイミングで商品を顧客に提案しているのか」や、「どういった場所で集客活動をしているのか」、あるいは「顧客ごとにどのような商品の併売を提案しているのか」といった情報を分析。分析結果を、販売実績の低い店舗やBDに伝えるようにしているのだという。
(続きは、「日本流通産業新聞」9月21日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ