特商法、消契法の改正案/事業者への執行強化が目立つ

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特定商取引法(特商法)と消費者契約法(消契法)の改正案が成立間近となっている。消費者庁が示した両法案の骨子は目立った反対意見もなく可決する見込み。現行法に比べると、事業者への執行強化が多く盛り込まれた内容となりそうだ。特商法は業務停止や懲役の期間が強化され、消契法は契約の取り消しの範囲が拡大することになる。

返金計画は事業者判断
 特商法と消契法の改正骨子は、2月25日に開催された自民党の消費者問題調査会で了承され、3月1日に政策審議会が開かれた。審議会で骨子の反対意見は上がっておらず、3月2日現在まで変更点はない。早ければ3月8日に閣議決定され、6月中にも成立する見込みだ。
 消費者庁の示した特商法の改正案骨子は、「被害回復に資する行政処分規定」が新設された。現行法では、被害回復のために必要な措置を指示できると規定されているが、消費者の被害回復の観点から措置を追加する。
 虚偽説明による契約の取り消しについては、期間を6カ月以内から1年以内に延長し、国や自治体が事業者を指導して返金計画を作成させる。
 計画書に記載する返金の対象範囲や具体的な金額については、「消費者が何をどれくらい契約したかということを確認できないため、事業者が判断して策定することになる」(取引対策課)と言う。また事業者は返金が完了するまで、消費者庁に経過を報告する必要がある。
 これに従わない場合は、現行法で規定されている100万円以下の罰金に加え、個人に対して6カ月以下の懲役刑も新設される。法人が指導に従わなければ、社長や役員などが逮捕される可能性がある。
 虚偽説明に対する罰金が300万円以下から1億円以下に引き上げることが一部で報じられていることについては、「決定事項ではないため詳細は控えるが、罰金の引き上げを前向きに検討していることは事実」(同)とした。
 このほか、業務停止を受けた事業者の役員が、停止期間中に別法人を立ち上げて業務を開始するのを禁じる「業務禁止命令」も新設する。同時に、現行法では業務停止の期間は1年以内としているが、2年に延長することも盛り込まれている。
 連鎖販売取引では、個人事業主に対して指示違反や検査の拒否があった場合、現行法の100万円以下の罰金に加え、6カ月以下の懲役も科せられる。
 訪販ですでに導入されている過料販売規制は、電話勧誘にも適用範囲を拡大する。また、通販では顧客から了承がない限り、ファックス広告も規制されることになる。

取り消し規定増える
 消契法は、契約内容が過量であることを知りながら消費者を勧誘して契約した場合、その契約を取り消すことができると規定する。一人暮らしの高齢者に大量の布団を購入させた場合などが対象となる。過量とする基準は、契約の目的や取引条件、消費者の生活状況から判断する。
 事業者から虚偽の説明があった場合、契約の取り消しが認められる対象も拡大する。新たな対象範囲として「消費者の生命、身体、財産などの重要な利益について、損害または危険を回避する必要性に関する事項」が追加された。リフォーム訪販事業者が「床下が湿っており、このままでは家が危ない」と虚偽の説明を消費者にし、床下への換気扇の購入・設置の契約をした場合などが対象となる。
 取消権の行使期間は1年に延長される。現行法で契約を取り消すことができる期間は、だまされて契約させられたことに気付いてから6カ月とされている。商品に欠陥があったり、サービス提供が行われない場合は、事業者が消費者にあらかじめ契約解除権を放棄させる条項を無効とすることも追加する。
 また、不作為(消費者が何もしなかった場合)によって契約の申し込みをしたと見なす条項が、消費者の利益を一方的に害する条項(10条)として例示される。想定される事例として、通販で掃除機を購入した際にサプリメントが同封されていた場合などに、不要である旨を申し入れなければ継続購入をしたと見なされるケースが対象となる。
 また、すでに継続購入を申し込んでいたが、契約更新の手続きをしなかった場合は、無効にならない。
 民法改正に伴う措置も講じられる。現在は契約を取り消した場合に現存利益(消費分を引いた残り)の範囲で返還義務を負うこととされているが、新民法では、原状回復義務を負うことになる。例えば、ダイエットサプリを3箱購入して、1箱を消費した後で成分の虚偽説明に気付き取消権を行使した場合、新民法では消費した1箱分の対価も返還しなければならなくなる。このため消契法では、商品・サービスの提供を受けた時点で契約取り消しができることを知らなかった場合に限り、返還義務を現存利益に限定する規定を設ける。

(続きは「日本流通産業新聞」3月3日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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