機能性表示食品制度/どうなる「関与成分の取り扱い」検討会/消費者サイドからマイナス意見が続々

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「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」の様子

「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」の様子

「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」が1月21日に幕を開けた。消費者庁は全10回の会合を開き、今秋をめどに報告書をまとめる予定だ。検討会の主な議題は(1)新制度では対象範囲外となっている栄養成分の取り扱い(2)機能性関与成分が明確ではないものの取り扱い-の二つ。議論は今後どう展開していくのか。消費者庁、有識者、委員メンバーの取材を通して探った。

今回の検討会の発端は消費者基本計画の文中にある。同計画では新制度について「施行状況の把握を行い、必要に応じて制度の見直しを行うとともに、残された検討課題についても施行後速やかに検討に着手する」と記載している。今回の検討会の目的はあくまで、ここでいう「残された検討課題」の検討にあるという。消費者庁では「制度自体の見直しについては、積み残し課題検討の議論の後の話」(食品表示企画課)としている。
 ところが、初会合では、各委員から「消費者の新制度の理解度」「食経験の考え方」「情報公開の考え方」など、〝積み残し課題〟ではないことに焦点を当てようとする声が相次いだ。
「検討議題自体に疑問」の声
 初会合では、「そもそも論」を蒸し返す委員もいた。消費者団体の複数の委員は、新制度の存在意義自体を疑問視するような発言をした。日本栄養士会専務理事の迫和子委員は「消費者による新制度への信頼度が醸成されていない中で、成分の追加などを議論するのは時期尚早」と、自ら参加する検討会の意義にも疑問を投げかけた。
 当日傍聴したある業界関係者は「制度や検討会の是非から議論しているようでは結論がまとまるのか。議論が飛躍しすぎだ」ともらしていた。
 いずれにせよ〝積み残し課題〟についての検討がこれから始まることになる。「対象外の栄養成分の取り扱い」もその一つだ。ビタミン・ミネラルなど、食事摂取基準で指標が策定されている栄養成分は、これまで新制度の対象外とされてきた。「食事摂取基準と異なる成分量及び機能で消費者への摂取を推進すると、健康・栄養政策との整合が図られなくなるおそれがある」(食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書)のが理由だという。
 ビタミン・ミネラルなど新制度の対象外とされた栄養成分には、栄養機能食品として一定の機能性表示が認められているものが少なくない。ただ、今回の見直しで、そうした栄養成分が新制度の対象となれば、栄養機能食品制度では表現できなかったような機能性表示もできるようになる可能性が高く、対象拡大に期待をかける販売事業者も多い。
 消費者庁では「産業界からは、具体的に例えばどんな表現が考えられるかを、第3回会合でヒアリングする」(食品表示企画課)と言う。「表現によっては栄養機能食品で表現できなくても、一部はトクホとして表現できることもある。両制度でできることを、新制度でできるようにする必要はないと考えている」(同)と話す。
 事業者サイドとしては、両制度ではカバーされない制度の〝スキマ〟を示し、対象拡大の必要性を具体的・合理的に示す必要がある。健康食品産業協議会の関口洋一委員は「ヒアリングの時点で、どこまで具体的な要望を出せるか検討している段階。栄養学や科学について猛勉強しているところ」と話す。
 一方、もう一つの〝積み残し課題〟である「機能性関与成分が明確ではないものの取り扱い」については、さらにハードルが高いとみられている。
 新制度創設を決めた検討会の報告書では「関与成分が不明確な食品」の扱いについて「適切な品質管理、品質保証が行われていることを条件に機能性表示を可能とすべきとの意見もあるが、安全性及び機能性を担保するとともに販売後の監視を可能とする観点から、このような成分の取扱いについては、制度の運用状況を踏まえ検討することが適当である」とされていた。
 「機能性関与成分が明確ではないもの」の機能性表示が可能となれば、例えばプラセンタや酵素なども新制度の対象となる可能性があり、新制度を活用できる食品の幅は大きく広がる。業界の活性化につながるとの期待感も高い。一方で、消費者団体サイドの委員からはすでに「安全性の面を考慮すると非常に難しいのではないか」(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会消費者生活研究所所長・戸部依子委員)といった反対の声が多く上がっている。
 消費者庁では「個別の素材についての議論というよりも、安全性確認の基準などといった大枠を決めて、個別の素材をそこに当てはめて考えていくことになるのではないか」(食品表示企画課)との見方を示している。
 消費者庁はこの議題について「産業界からどの程度の要望が出てくるのかが読めない」(同)としている。前出の関口委員はこの件について、「突っ込まれたときに反論もできないような無責任な要望を業界として出すわけにもいかない。どこまで具体的な要望を出せるか、検討している最中だ」と話している。
 国立医薬品食品衛生研究所薬品部長の合田幸広委員はこの件について、本紙取材に対して「議論の落としどころが全く見えない」と話す。

続きは「日本流通産業新聞」2月4日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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