広がるID決済導入/新規顧客獲得に有効策/スマホ普及で簡便さ追求

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国内におけるID決済の導入競争が激しくなってきた。現在、大手ではペイパル、楽天、アマゾンジャパンが通販サイトに導入先を広げている。国内の通販事業者は欧米諸国に比べ、顧客のフォローや囲い込みのために個人情報の登録を求める傾向にある。しかし、入力の手間やセキュリティー意識の高まりから、ID決済を選ぶ消費者が増えている。近年、スマートフォン(スマホ)の普及で電車内や飲食店でもネット通販を利用する人が急増。クレジットカード情報を含む個人情報の登録が必要ないID決済が有効策になりつつある。

面倒な購入手続き不要に

 ID決済は複数の通販サイトでそれぞれユーザー名やパスワードを登録する必要がない。初めて利用するサイトでも買い物がしやすいことから、事業者と消費者の双方から注目が集まっている。
 こうした中、ID決済を提供するペイパル、アマゾン、楽天の大手3社が、導入社獲得に向けた動きを活発化させている。
 通販サイトで「かご落ち」する主な要因として、ペイパルは「高い送料、会員登録の必要性、セキュリティー上の不安、面倒な購入手続きなどで、ID決済で解決できる要因が目立つ」と言う。
 ペイパルはネット通販向けID決済サービスのほか、実店舗でもタブレット端末を利用してペイパル決済ができるサービスを提供しており、現在、通販サイト、コンテンツサイト、宿泊施設、実店舗まで幅広く導入されている。
 家電量販店大手の通販サイトでは15年10月に、ヤマダ電機の「ヤマダウェブコム」が初めてペイパルのID決済を導入した。会員登録して購入しなければヤマダ電機のポイントは付与されないが、安い商品を1点だけ購入したい新規顧客に有効と判断。ペイパルユーザーは3ステップで簡単に購入できる仕組みを取り入れた。
 実際に、ID決済で新規顧客の購入が促進しているケースが増えている。
 楽天ID決済を導入している良品計画の通販サイト「無印良品ネットストア」では、楽天ID決済を利用するユーザーの新規顧客率が「無印良品ネットストア」全体における新規顧客率を大きく上回っているという。
 「無印良品ネットストア」の売り上げのうち、約7%が楽天ID決済を経由している。セール期間中は一般的に新規顧客の来店数が増えるものだが、良品計画が年に数回開催するセール「良品週間」では、楽天ID決済の利用率が通常時の約1・5倍に増加する傾向にある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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