【人気ネットショップの裏方事情】連載第73回 産地支援のブランドサイト立ち上げ

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「HOKKAIDO SHOWCASE」のサイト画面

「HOKKAIDO SHOWCASE」のサイト画面

北国からの贈り物では、海産物などの食品だけではなく、北海道産の素材を使った機能性食品や化粧品も取り扱っています。北海道には豊かな環境を背景に、多くの優れた健康関連素材があります。こうした産地を支援する目的で、ブランドサイト「HOKKAIDO SHOWCASE(北海道ショーケース)」をこのほど立ち上げました。
 創業時は食品を中心に取り扱いを広げてきましたが、季節変動の少ない常温品の拡充も行っています。その一環として、機能性食品や化粧品の開発にも力を入れています。5年前に海外で北海道商材の販売を始めましたが、日本のブランド、とりわけ北海道に対する人気は高いように思います。特に北海道のラーメンやスイーツ、魚介類もよく売れています。
 ただ、アジアには生鮮食品を販売するための物流インフラが整っていません。冷凍倉庫への安定的な電源の供給や都市部で慢性化している渋滞、冷凍便トラックの整備など、多くの課題があります。そのため、北海道の素材の大きな特徴である生鮮食品や冷凍商品に頼るだけではなく、常温で取り扱いができ、賞味期限が長い商材を扱うことで、海外向けのECビジネスを安定させたいと考えていました。そこで目を付けたのが、健康食品などの機能性食品や化粧品です。
 現在、消費者のライフスタイルが変化していくなかで、美容や健康に対するニーズが高まっています。アジアにおいても、シニア市場の拡大とともに、このニーズの高まりを見せています。ここで北海道の素材を使用した商品であれば、これまで食品を購入してきたアジアのユーザーにも需要はあると考えました。
 北海道が2013年から始めた「北海道食品機能性表示制度」(通称「ヘルシーDo」)というものがあります。この制度は、企業が提出する申請商品(加工食品)に含まれる成分に関する研究論文などについて、北海道が、委員会を設置し、学識経験者の意見を聞いて審査し「健康でいられる体づくりに関する科学的な研究」が行われた事実を認定するものです。認定されると商品のパッケージに「この商品に含まれる『成分名』については『健康でいられる体づくりに関する科学的な研究』が行われたことを北海道が認定したものです」という認定文言が表示できます。当然ですが、効果効能といった薬事法で禁じられている文言は表示できません。
 北海道に工場や拠点がある企業でないとこの申請ができません。素材が北海道の企業から供給されていれば申請の対象になります。
 政府が取り組んでいる「機能性表示制度」と同様の制度で、北海道が認定するというイメージになります。当社もこの制度を活用して、食品やサプリメントに商品開発に生かしています。例えば、従来は廃棄されていたアスパラガスの根元の茎の部分に優れた栄養成分があります。この茎を集め、サプリメントの素材として活用することで製品化している例もあります。
 当社が中心となって立ち上げた「HOKKAIDO SHOWCASE」は、北海道のメーカーとその素材を活用して橋渡しをするためのサイトです。北海道のメーカーが、優れた素材を持っていてもどのように製品開発すればいいのかといった悩みを持つところも少なくありません。全国の通販企業などがこのサイトに訪れてもらい、自社で製品化することも可能です。認証制度への申請に向けたコンサルティングも可能です。
 メーカーが製品化をした場合には、北国からの贈り物のウェブサイトでの販売も可能ですし、当社が海外で行う催事での販売もできるようにしています。北海道ショーケース専用のECサイトも立ち上げました。このサイトには現在、約20社のメーカーが参加しています。認証を取得するための支援だけではなく、販路に悩みを持つ企業に事業の拡大につなげてもらいたいと考えています。
 健康や美容市場は拡大する一途をたどっています。EC企業で独自の商品を開発したいという企業に貢献していきたいと思います。その結果として、北海道の農業や水産業などの経済の活性化につながっていくことを期待しています。(隔月1回掲載)


〈筆者プロフィール〉
加藤 敏明(かとう・としあき)氏
 65年北海道厚岸生まれ。東京都立大学卒業後、建築事務所に勤務。ネットショップ「北国からの贈り物」を98年6月にオープン。楽天市場ショップオブザイヤー・ベスト店長賞を4度受賞。

加藤敏明氏

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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