【韓国EC市場の今】第3回 徹底した日本戦略で成長するアパレルEC

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OHTOROのECサイト

OHTOROのECサイト

韓国アパレルの専門通販サイト「OHOTORO(オオトロ)」は起業当初から韓国語サイトは開設せず、越境EC向けサイトだけを運営しています。
 OHOTOROを率いる鄭·ナムユンCEOは「日本は韓国と文化的に類似したファッション大国として知られています。大手モール中心のEC取引が多く、多彩なアパレル通販が少ないことで専門通販を活用すると競争力があると判断しました」と日本進出の背景について話しています。
鄭CEOは、韓国のグローバルECプラットフォーム「カフェ24」を使用して2014年、日本語の越境ECサイトを開設しました。運営戦略研究のため1年間、日本に留学しました。留学の間に日本語を学習し、市場分析を行いながら、通販事業にも取り組みました。
 起業初期の状況について鄭CEOは「当時、パワーブロガーである日本人の友人がいて、ブランドコンセプト選定や運営に関するアドバイスをもらいました。韓国のファッションスタイルを提案しながら日本のトレンドを反映した製品などで差別化を図りました」と言います。

■日本人MDが企画

OHOTOROは、日本人の商品企画(MD)担当者により、韓国のスタイルと日本のはやりのスタイルを組み合わせた商品を提供しています。特に色と素材など、日本での購入が難しいオリジナル商品を通じて、16年の売上高は前年比10倍以上に増加するなど20代女性を中心に人気を集めています。
 価格より品質向上に注力しながら、ECサイトのコンテンツにも力を入れています。その一環としてメインページに個別商品画像だけを露出し、詳細ページで詳細なコーデ画像を掲載することで商品をより強調する効果を狙っています。
 シーズン別スマホケースのような自社製作したデザイン小物も販売しています。鄭CEOは「事業初期、認知度向上のため、デザインをあしらったケースを介して弊社ブランドへの顧客の好奇心を刺激し、初期認知度向上にも効果がありました」とブランド戦略について語っています。

■モバイル流入95%

OHOTOROは登録顧客に限り商品購入ができる運営方式を固守しています。これは、会員登録を行った顧客の場合、離脱率が低く、リピーターになり自発的なレビューを行ってくれる効果があるようです。
 モバイル流入が95%を超える点も注目するところです。モバイルショッピングの利用率が高い日本の特徴を踏まえ、モバイルECサイトのメインページで迅速な情報検索が可能な「ワンタッチ」機能を提供しています。
 顧客との接点を増やすため、インスタグラムなど日本語のSNSアカウントを運営するほか、期間限定イベントなど、日本顧客向けプロモーションも行っています。
鄭CEOは「昨年、実施したポップアップストアは、顧客の反応を確認した貴重な機会でした。SNS上でイベント情報を確認し、朝7時から並んだ顧客もいました。今後、弊社ならではのオリジナル製品を継続的にリリースし、日本での認知度向上に取り組んでいきます」と今後の取り組みについて話しています。


〈執筆者 略歴〉
 cafe24 マーケティング戦略研究所
  イ・シファン所長
 最近のEC市場において大きな話題となっている、「越境EC」に関するさまざまな経験やノウハウを蓄積している。記事の寄稿やセミナー講義、関連著書出版なども多数。日本や中華圏、英語圏市場進出を検討する企業に向けてマーケティング戦略、ビッグデータツール活用、ブランド戦略、CRM設計など専門的なコンサルティングを行っている。

OHTOROのインスタグラム

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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