【韓国EC市場の今】第2回 資金1万円から年商50億円ブランド誕生

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「66ガールズ」のサイト

「66ガールズ」のサイト

 韓国南部地方の中学生が07年に、高校受験を終えた足で韓国のアパレル中心地「東大門(トンデムン)」を訪れました。中学生は小遣いでためた約1万円で数枚の服を購入し、ネット通販を始めたものの、最終売上高は約4000円にとどまりました。
 この学生はここで諦めず、高校進学と共に本格的にECサイトを立ち上げ、数年後には年商数十億円規模のアパレルブランドのCEOになりました。これが韓国の代表的アパレルEC企業の一つである66ガールズを率いる朴イェナCEOのサクセスストーリーです。
 朴CEOは高校時代に年商数千万円を達成し、12年に年商10億円、16年には年商50億円を超える事業をつくりました。登録会員数は80万人を超えており、韓国EC市場でも成功事例として注目されています。
 「10年前、売上高4000円という結果に対して、悔しさよりも、通販の魅力を感じました。そこから同年代の友だちに向けて発信する気持ちで、アパレルコンテンツの制作や差別化戦略に取り組みました」と朴CEOは起業初期のことについて話しています。
 創業期のヒット商品は、ぽっちゃり女子に向けて着こなしを提案した「66サイズ(日本の11号サイズ)」の女性服でした。高校生CEOのストレートな意見を交えたマーケティングは、スレンダーモデルが起用された広告を「他人事」だと思っていた「普通の女の子」の女心をつかみ、人気を集めたわけです。

■ターゲット層を拡大

 現在の66ガールズは、事業初期とは異なる多様なサイズやスタイル提案を通じて、10~30代以上の女性顧客を開拓しています。これは世界有数のSPA(製造小売り)ブランドと競争するための長期的な経営戦略の一環であり、Lサイズを着る10代女性ではなく、誰もが利用できるアパレルブランドを目指す戦略ともいえます。
 具体的な取り組みについて朴CEOは、「毎週、60~70種類の新商品を投入しています。あらかじめ生産した数十種のデザインだけでシーズン単位の販売を行う他社とは違う戦略をとっています」と言います。
 この戦略により、最新のトレンドを取り入れた商品構成や品ぞろえによるブランディングが可能となります。大型SPAに比べ、迅速な商品更新を目指しており、このスピードこそがブランドの成長を後押ししています。

■日本向け越境ECに注力

 66ガールズが韓国市場で積み上げた運営戦略を越境ECに取り入れたことは、自然な流れだといえます。15年末、韓国のグローバルECプラットフォーム「cafe(カフェ)24」を使用して、日本語と英語、中国語(簡体・繁体)の越境ECサイトを開設しました。
 日本の場合、PayPal(ペイパル)やEXIMBAY、コンビニ決済などの決済サービスを提供しているほか、佐川急便などで配送しています。
 売れ筋商品に限っては、注文当日出荷システムも構築しています。日本のユーザーの利便性向上のため、ECサイト上で即日発送可能商品を別カテゴリーで紹介。日本のユーザーは他国のユーザーに比べ、短納期で商品を購入できます。
 台湾向けには、現地のSNSインフルエンサーを活用して商品を紹介。SNS上の口コミが広がり、現地で人気を集めています。


〈執筆者 略歴〉 
cafe24 マーケティング戦略研究所
  イ・シファン所長
 最近のEC市場において大きな話題となっている、「越境EC」に関するさまざまな経験やノウハウを蓄積している。記事の寄稿やセミナー講義、関連著書出版なども多数。日本や中華圏、英語圏市場進出を検討する企業に向けてマーケティング戦略、ビッグデータツール活用、ブランド戦略、CRM設計など専門的なコンサルティングを行っている。

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「66ガールズ」パク・イェナ代表

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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