【インタビュー】〈デジタルマーケの最新動向〉ネットイヤーグループ 取締役 佐々木裕彦オムニチャネルクラウド事業部部長/”顧客体験”を変えるオムニチャネル支援

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佐々木裕彦氏

佐々木裕彦氏

デジタルマーケティング支援を行うネットイヤーグループは、ECサイトの売り上げ拡大を支援するのはもちろん、クライアントのオムニチャネル戦略やデジタル戦略全般を任されることも多いという。セブン&アイ・ホールディングスが全社を挙げて取り組むオムニチャネル推進プロジェクトにも外部企業として参画している。ネットイヤーグループの取締役でオムニチャネル事業部長でもある佐々木裕彦氏は、同プロジェクトメンバーの一人でもある。最近は、米国のマーケティングイベントに参加し、海外の最新事例を収集してきたという。佐々木氏にデジタルマーケティングやオムニチャネル戦略の最新動向について聞いた。

「顧客中心主義」実現できるか

 ─海外イベントでは、デジタルマーケティングの最新動向を見聞きし、どう感じたか。
 セールスフォース・ドットコムが主催するマーケティングイベントに参加してきた。イベントには、6月16~18日の3日間で世界中のマーケッター約1万5000人が参加した。「企業がカスタマージャーニー(顧客が購入しファンに至るプロセス)をどのように構築するべきか」というのが、このイベントの大きなテーマだった。企業内のさまざまな部門のシステムを統合し、顧客データを共有できるようになった現在、企業は”顧客中心主義”をどうすれば実現できるのかという議論が多かった。
 ─国内では、システム統合や顧客データの共有がまだまだ進んでいない印象だが、米国など海外ではその先のステージに進んでいるということか。
 米国でもまだまだ顧客情報を一元管理できていない企業は多いようだった。米国では、連携が進んでいない孤立した組織のことを、「サイロ(Silo、家畜の飼料や穀物などの貯蔵庫)」と称していた。いかにサイロを壊し、組織を一つにしていくかという議論も多かった。これは日本に限った事ではなく、世界的な課題だ。
 ─日本企業にとって参考となるマーケティング事例はあったか。
 健康管理などに役立つセンサー付きのリストバンドメーカーであるジョウボーン社の事例が興味深かった。同社は、製品を継続的に使用してもらうために、組織の連携を強化していた。ジョウボーン社では、カスタマージャーニーチームを組織の中心に据え、そのチームがオーケストラの指揮者のように、各部門が適正に機能するように働きかけるようにしていた。例えば、コールセンターに製品に関する苦情が入ったら、製品の改善要求を開発チームに送る。その改善が実施できたときには、苦情を入れた顧客に対して、改善の実施や問い合わせのお礼の連絡を入れる。このような一連の流れをシステム上でスムーズに進めることができるよう、その流れをカスタマージャーニーチームが管理しているという。
 さらに、顧客の利用状況をデータで管理しており、利用頻度に応じたフォロー体制も構築していた。購入からの経過時間に応じた、利用頻度の目安を設定。その目安に応じてフォローアップの連絡を顧客の元に入れ、利用を促進するのだという。
 ジョウボーン社のように直接的に顧客の利用状況をデータで取れない企業が、工夫を凝らした事例もあった。玩具メーカーのマテル社は、ミニカーの購入者向けに、ゲームアプリの提供を進めていた。このアプリ上でミニカーに付いているQRコードを読み込むと、そのミニカーを使ってカーレースができるというゲームを提供。それにより、ミニカーをコレクションする楽しみを増やしたり、ミニカーで継続的に遊んでくれるように促している。ゲームという形で、オンライン上でつながることにより、購入後のフォローアップもできるようになるというのだ。

(続きは日本ネット経済新聞 7月2日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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