【八面六臂 松田雅也社長】〈飲食店向け食材EC〉自社物流で飲食店の仕入れ支える

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 飲食店向けに食材のECを展開している八面六臂(本社東京都、松田雅也社長)は、年々業績を伸ばしている注目のBtoB―EC企業だ。東京近郊の個人経営の飲食店の料理長をターゲットに、旬の食材のECを展開しており、継続顧客数は約1000店、月間売上高は8000万~1億円で推移している。個人飲食店向け食材卸の業界は、鮮度が高いまま生鮮食品を届けなければならないため、配送の難易度が高い。「運ぶ人がいない業界」(松田社長)の中で、同社では全て自社物流でECを展開している。ビッグデータを活用した、飲食店向けの独自の決済システムも構築している。八面六臂の松田雅也社長に、同社のEC事業について聞いた。

■日本の飲食店の半分がターゲット

 ─八面六臂のECの顧客ターゲットは。
 当社の顧客は東京近郊の中小の飲食店です。東京を囲むように走っている国道16号線の内側が配送可能なエリアです。グルメサイトなどでよく検索されている、個人経営の居酒屋やレストランの料理長の多くが、当社のECサイトを利用してくれています。
 当社は100%自社物流で商品を運んでいます。当社のトラックが一都三県のユーザーに対して配送を行っています。飲食店向けの食材、特に生鮮食品は、傷が付いたり、水が出たりしやすく、大手物流会社が配送しにくい商材も多いのです。人気の高い飲食店は都市部の入り組んだ地域に多く、配送が難しいという側面もあります。そういった地域に毎日配送をしている当社の自社物流のノウハウは、アドバンテージになっています。
 自社のトラックの運行状況は、常にモニターできるようにしています。トラックの配送到着予定時間はほとんどずれることなく運行しています。当社は「料理人にとってのアスクル」だと自負しています。
 当社はECを起点としてスタートしたわけではありません。注文方法をECに一本化したのは、約4年前です。当初は、個人経営の中小飲食店向けに、少量多品種の食材を扱う企業として、展開してきました。顧客となる飲食店に飛び込み営業をして、少しずつ商品点数も増やしてきました。
 これまで、料理人には、ECを使う文化がありませんでした。インターネットが普及した2000年代前半でも、FAXが主流でした。一方で、飲食店のお客さんは、フランチャイズチェーン店ではなく、個人経営のお店を選ぶようになりつつありました。中小のお店にお客さんが集まっていたのです。
 2010年以降、携帯電話はガラケーからスマホに変わり、誰でもECが使えるようになりました。そこで、料理人に向けたマーケティングを考え、当社のビジネスモデルを構築しました。飲食店の店長向けのビジネスモデルである「食べログ」のようなサービスとは異なり、料理長に向けたマーケティングを行っています。
 日本の飲食店は120万店舗ほどあるといわれています。その約8割にあたる100万店舗が、中小の個人経営のお店です。さらに、当社の配送可能エリアである、東京・神奈川・千葉・埼玉などの都市部には、日本の飲食店の半分があるといわれています。こういった地域のターゲットに対して、自社の物流網のメリットを伝え、マーケティングを行っています。継続的に当社のサービスを利用している飲食店は約1000店舗です。

(続きは、「日本ネット経済新聞」7月11日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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