【EC元気県レポート〈滋賀ネット経済新聞〉】 近江牛などの食文化に注目/地場産業の魅力を発信

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 滋賀県は日本最大の面積を持つ湖、琵琶湖を中心とした内陸県。県内最大の都市で、県庁所在地である大津市の人口は約34万人だ。繊維工業など製造業が盛んなほか、湖魚料理や近江牛など、県外に発信する食文化も注目されている。県としてECに対する大きな取り組みは行っていないが、伝統産業を保護・推進する動きは高まっており、各事業者がECを活用して、産業の魅力を発信する事例は増えている。

■少ないEC交流

 魅力的な伝統産業が多数ある中、県外への浸透はなかなか進んでいないというのが実情だ。取材を通じて「外へのアピールが苦手」だと、県民性を表現する事業者も多数いた。
 ECでも同様だ。県や中小企業組合はセミナーなどを単発で開催しているが、継続的な支援には至っていない。県外の団体に参加するEC事業者も少なくない。古くから東海、近畿、北陸をつなぐ交通の要所として栄えてきた滋賀県だが、その分人材の流出にも悩まされているようだ。


■注目集まる産業も

 県外への発信が十分でないとする一方、局地的に注目が集まる滋賀県の産業もある。19年の秋には、滋賀県の代表産業である信楽焼が、NHKの朝ドラの題材として取り上げられた。舞台となった甲賀市には多くの観光客が訪れている。
 琵琶湖の湖魚を加工した発酵食品も、独特の製法と栄養価の高さが、近年国内外から注目を集めている。
 こうした動きを受け、自社ECサイトで商品やブランドの発信を独自に活性化させる事業者は少なくない。
 滋賀県は16年、地場産業の振興を目指す「近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する条例」を施行した。滋賀県中小企業団体中央会が同条例を受け開設したECサイトでは、地域の伝統産業にまつわる商品も販売している。
 伝統産業の認知の場として、ECサイトを活用するケースは今後も増えていきそうだ。


■近江商人の精神

 滋賀県出身の事業者のルーツでもある、近江商人を象徴する言葉として「三方よし」という考え方がある。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」と、三つのよしがそろって、初めていい商売が成立するというものだ。
 現在の滋賀県内の事業者にもその思想は色濃く根付いている。事業者のECページにも、ユーザーの利益を優先した施策や、自社商品だけでなく産業そのものをアピールする項目を多く目にする。
 商売の場や形は変われど、根本の「精神」の面において近江商人の思想は、滋賀県内のEC事業者へと受け継がれているようだ。

■掲載記事
・〈千成亭風土「近江牛の千成亭」〉/「コト消費」を推進/近江牛ブランドを発信
・〈至誠庵「石山寺至誠庵」〉/「ふなずし」を販売/独自商品やレシピの紹介も
・〈滋賀県中小企業団体中央会「滋賀の名品」〉/県内120社が参加/アンテナショップとも連携
・〈マルイチ奥田陶器「まるいち本店」〉/名入れ商品を充実/ギフト需要に向けて訴求
・〈Co Creation「記―sirusu―(しるす)」〉/完全手作業で製本/オリジナルノートを販売
・〈取材日記〉ECを発信窓口に

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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