〈楽天市場の送料無料ライン〉 ”3980円”に統一/有力店が漏らした”懸念”と”予測”

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「送料無料ライン」を発表する三木谷浩史社長

「送料無料ライン」を発表する三木谷浩史社長

 楽天は8月1日、楽天市場の送料無料ラインを「注文金額3980円以上」に統一すると発表した。来年2~3月に開始する予定。三木谷浩史社長は「送料無料ラインの統一化がなければ楽天市場と店舗がともに成長していくことは困難」と説明し、理解を求めた。イベントに参加していた楽天市場の有力店からは、「低価格品を扱う当社には非常に厳しい」という声も聞かれた。ある店舗は「三木谷社長は送料無料ラインを2000円にしたかったと聞いた。今後、さらなるラインの引き下げがあるかもしれない」と語った。

 楽天はグループの総合イベント「RakutenOPTIMISM(ラクテンオプティミズム)2019」において8月1日、楽天市場の戦略共有会を開催した。会の冒頭で三木谷社長が出店者向けに講演し、来年初頭に送料無料ラインを「注文金額3980円以上」に統一する方針を発表した。
 送料無料ラインとは、注文金額に応じて購入者の送料負担を0円にするサービスのこと。「楽天市場」はこれまで、出店者に送料の設定を任せていた。
 今年1月の新春カンファレンスにおいて、三木谷社長は「送料無料ラインを統一する」と発表していた。しかし、送料無料ラインの設定金額は明らかにしていなかった。
 楽天は最適な送料無料ラインを見極めるために、さまざまな店舗で実験を行ってきた。店舗の収益面への影響やユーザーのベネフィット(利益)、購入金額に与える影響などを総合的に判断し、「注文金額3980円以上」に決めたという。
 送料無料ラインは3980円を下回る設定は可能。例えば「全品送料無料」「2980円以上の注文で送料無料」は可能だが、「5000円以上の注文で送料無料」は楽天が定めた「3980円」を超えるため、来年のサービス施行以降は設定不可となる予定だ。
 1店舗のみの注文金額の合計が対象となる。160サイズ以下の商品を対象としており、冷蔵・冷凍商品や大型商品は対象外になるという。離島への配送も対象となる。


■熟慮の上、来年開始

 新春カンファレンスでは年内に送料無料ラインを統一すると発表していたが、店舗の準備期間などを考慮し、来年2月以降にサービスを開始することにした。
 本紙が今年2月、楽天市場の出店者が加盟する会員サービス「ECマスターズ」と共同で実施した「送料無料ライン統一化」に対する意識調査では、回答者の33・3%が「反対」の声を上げていた。さらにサービス実施後は「利益の減少」を懸念する意見が多かった。
 楽天は地方で楽天市場の出店者と意見交換を行うタウンミーティングを実施しており、「送料無料ライン統一化」に対する意見もヒアリングしていた。さらに金額をいくらに設定するかについても熟慮を重ねた模様だ。


■大半が理解してない

 戦略共有会に参加していた有力店からは、さまざまな意見を聞くことができた。
 ファッション関連用品を扱う店舗は、「うちは単価が低いので非常に厳しい。現在は全品で送料をもらっているが、今後は価格設定などを見直さないといけない」と話している。
 インテリア用品を扱う店舗は、「メーカーの希望小売価格が3980円を超えている商品がたくさんある。これまではメーカーの希望小売価格で販売し、送料を徴収していたが、今後はどうすべきか分からない」とメーカーとの調整を懸念していた。


■本命は2000円?

 食品関連のある店舗は、「三木谷社長は2000円にしたかったと聞いた。店舗の混乱を考えて3980円にしたのではないか。今後、ラインを下げてくる可能性もあるだろう」と予測している。
 アマゾンの一般ユーザー向けの送料無料ラインは「2000円」だ。楽天がアマゾンを意識し、「2000円」にしたかったという話は説得力がある。ただ、楽天は「あくまで実験の結果、3980円が最も効果的だと判断した」と説明する。
 楽天は送料無料ラインの統一化で対応に困った店舗には、物流の効率化・コスト削減が期待できる物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」を提案するという。


【三木谷浩史社長の講演(抜粋)】 10%以上の増収望める

 さまざまな化学的な分析、消費者へのヒアリング、シミュレーションや実験を行った。結論としては(購入金額が)3980円を超えれば、基本的に送料は無料ということで統一する。
 実験では(3980円の送料無料ラインを導入したことで)購買金額が15%上昇し、新規購入者数が14%伸びた。ラフな予測だが、導入により10%以上の売上高の伸びが望める。
 「送料を全てかぶれ」と言っているのではない。その分の価格を調整していただければと思う。分かりやすくするというのが一番大きなポイント。この取り組みにご理解いただき、できれば来年の2、3月には導入したいと考えている。

「送料無料ライン」は3980円に

「送料無料ライン」は3980円に

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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