楽天 〈物流の一元化に本腰〉/チャット、メールの新サービスも

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三木谷社長は物流一元化に本気で取り組み姿勢を示した

三木谷社長は物流一元化に本気で取り組み姿勢を示した

 楽天は7月17日、出店者向けイベント「楽天EXPO」において、楽天市場の物流を一元化する取り組みを本格化すると発表した。20年までに出店者の全商品を楽天経由で配送する。楽天が商品の保管から宅配まで一気通貫で行うことで、効率的で利便性の高いサービスを実現。三木谷浩史社長は、「やらなければ将来が開けない」と物流一元化に本気で取り組む姿勢を示した。9月下旬にはチャット機能を全店舗へ一斉導入。楽天主導でメール施策を行う新サービスも開始する。楽天はECを取り巻く環境の変化に対応し、競争力をさらに高めたい考えだ。

 楽天市場の出店者は20年までに、楽天市場で販売した全商品を楽天の物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」経由で配送することになる。楽天は商品保管能力を拡張するため、千葉・流山市と大阪・枚方市に新センターを開設する。
 現在、千葉・市川市(2拠点)、神奈川・相模原市(1拠点)、兵庫・川西市(1拠点)に物流センターを設けている。18年中には千葉・流山市に、19年中には大阪・枚方市に、それぞれセンターを新設し、計6拠点の物流体制を構築する。新センター開設後は、楽天の翌日配送サービス「あす楽」について国内90%以上の地域をカバーできるという。
 「注文からお届けまでの時間を短縮する。商品を正確に届ける。倉庫を全自動に近い形で運営し、人工知能(AI)を活用しながらエンド・トゥ・エンドで効率化する」(三木谷社長)と話す。
 サービスを刷新することでユーザーは楽天市場のどの店舗で商品を購入しても、同様の物流サービスを利用できるようになる。置き配など受け取り方法を増やしたり、受け取り時間や場所の変更にも臨機応変に対応できるようにする。


■自社倉庫にも対応

 物流一元化に向け9月1日、「楽天スーパーロジスティクス」の料金を改定する。60—100サイズの荷物は1個380円で配送。割安な料金を提案し、出店者の物流を受託したい考えだ。
 出店者は自社倉庫から商品を出すことも可能だが、その場合は商品をいったん、楽天の倉庫に送るか、楽天が引き取りに行くようになる。
 「うちが取引している料金の方が(「楽天スーパーロジスティクス」よりも)安いという店舗もあるだろう。その場合は現在の宅配会社と取引を続けていただいても構わないが、基本的には20年までに全商品を楽天が届ける。在庫を預けない店舗さんには個別に料金交渉を行う。店舗さんには今の物流費用よりも安くなるようにしたい」(矢澤俊介執行役員)と話す。
 宅配に関しては現在、東京23区で運営している自社配送サービス「Rakuten EXPRES(ラクテン・エキスプレス)」を拡張する。関西にも対応地域を広げる。
 現在、運用試験を進めているドローン配送なども活用できるようにする。出店者への集荷や物流拠点間の幹線輸送、一部の宅配などについては外部の物流企業と連携する見込みだ。


■決済やメールも

 楽天が物流サービスを一元化する取り組みは、決済の取り組みと似ている。楽天は昨年から、段階的に出店者の決済方法を「楽天ペイ」に一本化している。11月には後払い決済に対応し、年内には「楽天ペイ」への一本化を完了する予定だ。
 これまでは出店者が個別に決済会社と契約していたため、店舗によって決済方法がバラバラだった。「楽天ペイ」に一本化することで、ユーザーはどの店舗でも同じ決済方法を利用できる。サービスを共通化することでユーザーが安心して買い物できるとみている。
 楽天は物流だけでなく、メールマーケティングにおいても一元化を進める。これまで店舗が個別に送っていたメール「R—Mail(アールメール)」を段階的に縮小し、楽天がユーザーの属性や購買データ、関心に基づき、効果の高い内容を盛り込んだメールを送る仕組みの「R—Message(アールメッセージ)」に移行する計画だ。


■全店舗にチャット

 メール以外にも販促機能を強化する。9月下旬には、出店者とユーザーがチャットでコミュニケーションできる機能「R—Chat(アールチャット)」を全店舗に導入する。年内は無料でサービスを提供するが、来年からは月額5000円を徴収する。「がんばれプラン」「エンパワーメントプラン」の店舗には月額3000円を徴収する。
 昨年からチャット機能は約100店舗で試験運用を実施していた。「転換率が14.8ポイント上昇した事例もある」(三木谷社長)と導入効果を説明する。
 店舗が楽天市場のページ上で顧客の問い合わせにリアルタイムに回答することで、転換率上昇に寄与するとみている。将来的にはAIが自動応答するチャットボットを導入する方針だ。
 アフィリエイトプログラムも刷新する。全店舗同様だった料率をカテゴリーごとに変更し、プロモーション効果を高める。計測期間は厳格化し、効果分析の精度を高めるという。
 楽天はEC市場の環境変化に対応するとともに、競争力をさらに高めるためにサービスを刷新する。物流ではアマゾンが先行しているが、楽天は宅配まで自社で行い、サービス品質を高める。チャット機能は他のモールにはない強みとなるだろう。
 ただ、いずれのサービスも効果を最大化するためには、出店者の理解と積極的な活用が必要だ。7月末に出店者へサービス刷新の案内を送付し、その後、丁寧に説明を重ねる予定だ。

効率的で利便性の高い物流サービスになるという

効率的で利便性の高い物流サービスになるという

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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