楽天/2年で独自の配送網構築/注文から配達までAIが最適化

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三木谷浩史社長が新たな戦略を発表

三木谷浩史社長が新たな戦略を発表

 楽天は1月30日、都内で開催した「楽天新春カンファレンス」で、2年以内に独自の配送ネットワークを構築する方針を明らかにした。商品の注文から配達まで人工知能(AI)を駆使した管理体制を整え、効率的な配送サービスを実現することで出店企業の物流コストを削減する。配達方法や受取場所を多様化するため、外部企業との連携も加速する。三木谷浩史社長は変革の時代で戦い続けるため、「覚悟を持って〝超挑戦〟する」と意気込んだ。三木谷社長は、店舗と顧客とのチャットサービスを本格展開する方針も発表した。

 楽天は楽天市場の決済機能を独自サービスに一元化したように、物流サービスも一元化し、店舗の配送コスト削減やユーザーの利便性向上を目指す方針だ。
 「宅配会社から運賃値上げの話を受けている店舗も多いだろう。われわれは一致協力して一緒にチャレンジしていかないといけない。楽天市場の出店者全体が一つのサプライ・チェーン・マネジメントであるかのような形にしていきたい。『One Delivery(ワン・デリバリー)』という考えで、すべての配送を包括的に契約・管理したい」(三木谷社長)と話す。
 ただ、「うちは宅配会社と良い条件で契約をしているから今のままでいいという店舗はそのままいけるようにする」(同)と説明しており、店舗側は楽天の配送ネットワークを導入するか選択できるようだ。

■受取の柔軟性高める

 楽天グループとしても独自の配送ネットワークを構築する考えだ。現在も即時配送サービス「楽びん」を展開しているが、新たな配送手段を開発する可能性がある。
 「ECに特化した独自の配送ネットワークを作る。既存の宅配会社のネットワークはCCをベースに作られていて、非効率だ」(同)と見ている。
 配送手段の選択肢としては、一般ユーザーが商品を運ぶシェアリングエコノミーも視野に入れている。楽天は配達のシェアリングエコノミー企業やライドシェア企業に出資しており、システム構築のノウハウを吸収している。
 受け取り手段も多様化する。購入店舗以外の店舗で受け取れるようにしたり、購入者の最寄りの店舗のスタッフが購入者まで届けたり、楽天の社員が配達するといった方法も模索する。
 ネットスーパーの配送網を活用した冷蔵物流や、すでに実証実験を行っているドローンによる遠隔地や過疎地への配送も行う計画だ。
 「自前でやるだけでなく、大手私鉄の幹部からは、『この沿線は私鉄の子会社が届ける』という話ももらっている。明らかに大手宅配会社より安い配送サービスを実現できる」(同)と話す。

■国内に10拠点設置

 店舗の荷物を預かる物流代行サービス「楽天スーパーロジスティクス」も強化する。物流拠点を国内に10カ所以上設置する予定だ。現在、日用品の直販サービス「RakutenDirect(楽天ダイレクト)」の倉庫では自動化が進んでおり、こうしたテクノロジーを「楽天スーパーロジスティクス」にも導入する。
 配達方法や受取場所のバリエーションを拡大するとともに、商品の注文から配達までを楽天のプラットフォーム上で管理し、AIを駆使することで配送の最適化を図れるようにしたいという。

■全店にチャット機能

 楽天は昨年から、店舗とユーザーのコミュニケーションを図るために、数十店舗にチャット機能を試験提供している。今年は全店舗への導入を目指している。
 イベントではすでに試験導入している家具通販のタンスのゲン(本社福岡県)が、デモンストレーションを実施した。
 同社の橋爪福寿社長は、「電話やメールの問い合わせは変わらないが、チャットの問い合わせは1日100件、200件と増えている。メールなどで問い合わせるほどではないような質問をいただき、それに答えることで購入数の増加や転換率の上昇を実感している。お客さまも満足していただいているようだ」とみている。
 今後はチャット機能にもAIを搭載し、問い合わせに自動応答できるように機能を拡充する方針だ。
 「楽天グループのモットーは、『ネット販売は自動販売機ではない』ということ。楽天市場という媒体を使い、店舗と消費者をつなげていくことが、アマゾンとは違う。買い物というエクスペリエンスをツールと考えているか、われわれのように店舗と消費者が楽しんでコミュニケーションしながらショッピングしていくかの違いだ。当社はこの道を追求していきたい」(三木谷社長)と話す。

「タンスのゲン」がチャット機能の感想を紹介

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