中小EC各社/アナログ活用で大手に対抗/電話接客などで顧客満足度向上へ

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ヨロストのサイト画面

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 EC業界で、AI(人工知能)などさまざまなマーケティングツールを活用し、効率化を図る動きが活発だ。その一方で、カタログを発行したり、電話による注文を積極的に受け付けるなど、「アンチデジタル」を掲げ、顧客満足度を高める企業の動きも出てきている。電話で商品に対する詳細な質問に対応したり、ネットで商品閲覧はできても、注文ができないシニア層を対象に、電話で注文を受ける家電ECの動きも目立つ。大手EC企業にはない電話などによる接客を心掛け、顧客満足度の向上やその後のリピート購入にもつなげている。

 中小のネットショップにとって、大手を含めた競合他社と差別化をどのように図っていくかは共通の課題だ。また、せっかく新規顧客を獲得しても、2回目以降の購入につなげるためには、メール配信やリスティング広告、レコメンド機能など最新のマーケティングツールを活用するだけの体力も必要になってくる。
 最新のマーケティングツールを十分に活用できず、売り上げが伸び悩む企業も多い。スマートフォンの普及で、シニア層など幅広い世代にECがより身近になっている中、カタログを発行したり、電話やFAXの注文を組み合わせて、ネットリテラシーの低い顧客にもアプローチして、大手企業とは差別化を図ろうとする企業も出てきている。
 楽天市場において9年連続でジャンル賞を受賞するECサイト「うきうきワインの玉手箱」を運営するワインギャラリーひろせ(本社和歌山県)は、一般顧客との電話接客を強化している。
 同社の広瀬晋作社長は「ワインは食品なので、飲んでみたらイメージと違っていたということもある。お客さまから電話などでクレームをいただくことは、当社に対する期待の表れと受け止めている」と話す。電話対応は基本的に18時までとしているものの、時間外のケースにも柔軟に対応する。
 また、従業員のワインに対する知識を深める努力も重ねる。広瀬社長自ら「ソムリエ」の資格を持つ。海外への買い付けの際に仕入れた情報を積極的にスタッフに伝える。ECの運営スタッフも実際にワインを試飲し、顧客から商品について質問されても対応できるように準備をしている。
「スタッフ自身が実際に商品を試していることでお客さまとの信頼関係につながっている」(広瀬社長)。商品説明が詳細であることもヘビーユーザーの評価の高さにつながっている。
 家電のネットショップ「アキバイーチョイス」を運営する広進(本社東京都)は、電話注文に対応する専門スタッフ4人を配置している。ECサイトの場合、商品に関する質問や注文にはウェブのみで対応するのが一般的だ。同社では、ネットで注文ができない50代以上に対する接客を重視している。
 家電ECは価格競争に陥ってしまう懸念もある。こうした懸念を回避するために、電話による注文方法を付加することで、他社との違いを明確にすることが大きな狙いだ。
(続きは、「日本ネット経済新聞」3月9日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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