2017年のEC市場展望/最注目キーワードは〝AI〟

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 2017年のEC市場はどうなるのか。日本ネット経済新聞は16年12月~17年1月にかけて、有力EC企業にアンケート調査を実施。各社のEC市場展望や17年に取り組む重点施策を聞いた。回答企業の73.3%が17年のEC市場の見通しを「明るい」「たぶん明るい」と回答。EC市場の成長は継続し、まだまだ事業を拡大できると答えた企業が多かった。ただ、回答企業の中からはECモールにおける競争激化を懸念する声も聞かれた。17年のEC市場で気になるキーワードとしては「人工知能(AI)」を挙げる企業が最も多かった。 

■スマホが成長要因
 「17年のEC市場の見通し」において、「明るい」と回答した企業が最も多く、全体の40.0%を占めた。一方、「たぶん暗い」「暗い」と回答した企業は1社もなかった。
 通販大手の千趣会は、「消費のEC化(特にスマホからのEC化)は進む」と回答。ほかにもスマホユーザーの拡大やスマホECの浸透をEC市場の成長要因として挙げる企業は多かった。
 TシャツECのspicelife(スパイスライフ)やリフォームECのセカイエも、スマホECがEC市場の成長をけん引するとみている。

■CRMに勝機

 異なる要因でEC市場の〝伸びしろ〟を指摘する声もある。クラフトビールのECサイトを運営するヤッホーブルーイングは、「CRM(顧客関係管理)の成功事例が少ないことからもまだまだチャンスはある」とみている。
 スマホケースのECサイトを運営するベーシックは、「リアル店舗でのECやリアルイベントでのECが当たり前になる」と予測。手軽にECに取り組めるサービスが増えており、リアルとECを絡めた事例が増えつつあるという。

■競争激化を懸念

 「17年のEC市場の見通し」において、全体の26.7%が「どちらともいえない」と回答した。
 家電ECのアイ・アンド・ティーは「EC市場規模の拡大は続くが過当競争になっている」と指摘。ヘアケア用品ECのアデランスも「市場は成長しているが競争も激化している。プロモーション費用の高騰も課題」と指摘する。
 ネット広告のCPA(1件の注文を獲得するためにかかった販促費)が悪化しているという見方もあり、集客面に課題を抱えているEC企業も多いようだ。
 健康食品ECのFor―S(フォーエス)は、キュレーションメディアや定期購入ECにおいて昨年トラブルが噴出したことを受けて、「問題への対応次第で売れる会社と売れない会社の差が広がりそうだ」と予測する。

■AIの実用化進む

 EC市場における注目キーワードについても聞いた。数あるキーワードの中で最も注目度が高かったのは、「人工知能(AI)」だった。
 近年、さまざまな分野でのAI活用が注目される中、EC業界でもAIを活用したサービスがリリースされており、注目度が高まっているようだ。AIをカスタマーサポートで活用したり、商品提案に活用したりする事例も出ている。17年中にどこまでAIがEC市場に浸透するかは分からないが、着実にAIの技術は進化していくだろう。
 AIに続き注目度が高かったキーワードは「CRM」と「オムニチャネル」だ。
 自らもオムニチャネルに取り組むメガネスーパーは、「店舗を構える小売事業者のECやオムニチャネル施策に成長余地がある」と見ている。酒類のEC事業を展開するカクヤスは、「CRMを強化し将来の顧客育成を重点課題としている」と言う。17年もオムニチャネルやCRMの強化を図るEC企業が多そうだ。

《2017年のEC市場展望》最も注力するのは自社サイト

 有力EC企業が17年に最も注力するチャネルは「自社サイト」だった。ECモールの競争が激化する中、独自性の高い自社サイトを構築し、堅実な成長を目指すEC企業が多かった。
 中古品ECのギャラリーレアは、「大手ECモールの成長が鈍化している」と指摘する。寝具ECのまくらは、「17年はECモールで苦戦しそうだ」と予想している。ほかにもECモールでの過当競争を避け、自社サイトに成長を見いだす企業は多かった。
 オムニチャネルやCRMを強化したいEC企業の多くも直接、顧客と接点を持てる自社ECサイトを積極的に活用したい考えだ。
 最も注力したいECモールとしては、「楽天市場」を挙げる企業が多かった。アマゾンやヤフーショッピングなどのECモールも成長しているが、楽天市場を重視している企業が多いことも分かった。

■76%が越境ECに意欲

 海外の販売チャネルに取り組む「越境EC」をすでに実施している企業は、全体の43.3%に達した。全体の3.3%が「今年中に越境ECを実施する」と回答。さらに、全体の30.0%が「将来的に越境ECを実施したい」と答えた。
 すでに越境ECを実施する企業と、これから越境ECを実施する企業を合わせると全体の76.6%に及ぶ結果となった。越境EC市場は今後も拡大すると見込まれており、参入企業も引き続き増えそうだ。

■商品力で差別化

 17年の優先課題としては、「売り上げ拡大」と回答する企業が多かった。EC市場が拡大する中、さらなる売り上げ向上を目指す企業が多いことが分かった。
 具体的な取り組みとしては、「商品力の強化」を挙げる企業が目立っている。
 アスクルは17年の重点施策として「ECの特性を活用した商品開発とマーケティング」に注力すると回答。旅行関連商品のECサイトを運営する全日空商事は、「商品やサービスの提供価値を見直し、極めることで自社サイトの存在価値を高めたい」としている。
 競争が激化する中、商品力を高めることで同業他社との差別化を図る傾向が浮き彫りとなっている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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