セブン&アイHD16年2月期/EC売り上げ減少し1418億円/3年後の1兆円構想に暗雲

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)の16年2月期のEC売上高は1418億8400万円だった。15年2月期のデータは開示していないため増減率は不明だが、16年2月期のEC売上高は減収となったようだ。EC売上高において最も大きなシェアを占めるニッセンが大幅減収となったことが要因だ。セブン&アイHDはグループ横断のECサイト「omni7(オムニセブン)」を核とした成長戦略により、19年2月期までにEC売上高を1兆円に拡大する計画を立てている。「オムニセブン」強化のために商品開発(MD)に注力しているというが、計画達成の雲行きは早くも怪しくなってきた。

【足を引っ張るニッセン】
 セブン&アイHDは昨年9月の「オムニセブン」構想発表時に、15年2月期のEC売上高が約1600億円だったことを明らかにしていた。同社の16年2月期におけるEC売上高が1418億8400万円だったことから、前期よりも大幅減収となったとみられる。
 ニッセンのEC売上高の減少が減収の大きな要因となっている。ニッセンの15年12月期におけるEC売上高は前期比16・2%減の516億8200万円だった。EC売上高が100億円以上減少しており、グループ全体の足を引っ張った格好だ。
 ニッセンの15年12月期売上高は、前期比21・0%減の845億4300万円だった。コスト効率の見直しに伴い、カタログの発行部数を大幅に削減したためだ。さらに、在庫処分の早期化に伴う原価率の上昇で収益が悪化。ニッセンの営業損失は89億3800万円にまで膨らんだ。 
 ニッセンは赤字体質の改善が急務であり、EC事業に注力しきれていないのが現状なのだ。

【計画先行きは不透明】
 セブン&アイHDは17年2月期のEC売上高を前期比2・8倍の4000億円にまで拡大させたいという。さらに18年2月期にはEC売上高を6000億円まで伸ばし、19年2月期までにEC売上高を1兆円の大台に乗せたいと考えている。
 急速な拡大が求められるさなかにEC事業が減収となっているようでは、計画の先行きにクエスチョンマークを付けざるを得ない。
 しかも、4月19日には、「オムニセブン」を先導してきた鈴木敏文氏がグループの経営から身を引いた。同社はこれまで、鈴木氏の強烈なリーダーシップの下、巨大なグループを挙げてオムニチャネル戦略を進めてきた。リーダーの離脱は、今後の事業計画に大きな影を落としかねない。
 同社の広報は、「(鈴木氏退陣後も)グループを挙げてオムニチャネルを推進していく方針は変わらない」(広報)と話す。

【「オムニセブン」がカギ】
 セブン&アイHDが今後、EC事業を飛躍的に拡大させるためには、ECサイト「オムニセブン」がもたらす〝グループシナジー〟が必要不可欠だ。
 「オムニセブン」は15年11月、コンビニエンスストア「セブン―イレブン」やスーパー「イトーヨーカ堂」、百貨店「そごう」「西武」などの商品が横断的に買えるECサイトとして開設された。
 セブン&アイHDの全国にある店舗網を生かしたサービスも「オムニセブン」の強みだ。サイトで注文した商品は全国に約1万8000店ある「セブン―イレブン」で受け取ることができる。もちろん店舗までの送料は無料だ。さらに、店頭の専用端末を利用し、「オムニセブン」の商品を注文できるだけでなく、商品の返品・返金にも対応している。 
 「オムニセブン」によって構築されたサービスのインフラをグループ各社が効果的に活用することにより、各社のEC売り上げを拡大できるとセブン&アイHDは考えている。さらに、「オムニセブン」の利便性がユーザーに浸透することにより、グループの商品を横断的にネットで購入するようになると同社は期待している。

(続きは「日本ネット経済新聞」4月28日・5月5日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ